1.[Pd_2(μ-Cl)_2(π-allyl)_2]の塩素架橋を3級ホスフィンPR_3で切断し、次いでMeliによりメチル化して目的のπ-アリル(メチル)パラジウム錯体[(π-allyl)Pd(Me)(PR_3)]を高収率に得た。 2.1で得られた錯体のIR、MSおよび^1H、^<13>C-NMRを測定し、その構造を決定した。MSでは3つの特徴的なフラグメントをPd(allyl)L^+>PdL^+<(PdL-1)^+の強度比で検出した。最後のものはメチルラジカルとプロペン分子が共に分子イオンから追い出されたものに相当し、その錯体がアリルアルキルカップリング生成物であるノーブテンに優先してメチル基を失い、その後Pd(allyl)L^+のアリル基が配位ホスフィンから水素ラジカルを引き抜いてプロペンを遊離させることが判った。 3.固体および溶液中で熱分解を試み、発生気体をガスクロ定量した結果、主生成物はノーブテンではなくエタンであることが判明した。この分解経路はホスフィンの解離により生じたメチル架橋のπ-アリルパラジウムニ核錯体からエタンが分子間的に還元的脱離し、アリル架橋パラジウム(I)二核錯体が生成するとして説明した。 4.熱分解におけるホスフィンおよびアルテンの添加効果を調べた結果、ホスフィン添加では発生ガス中のノーブテンが約50%に、また、無水マレイン酸では約90%に増量するが、分解率は尚50%以下に届まることが判った。 5.錯体合成の別法としてホスフィンによる塩素架橋切断より先に、MeLiでメチル化する方法も検討し、良い結果を得た。その際中間体として生成するメチル架橋二核錯体にビス(ジフェニルホスフィン)メタン(dppm)を反応させたところ、予期に反して新しいPd(I)の四核クラスター[Pd_2(μ-Cl)(μ-allyl)]_2(μ-dppm)_2を生成することが、X線結晶解析により明らかにされた。
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