1 四量体白金錯体[PtCl(allyl)]_4を出発原料とし、前年度合成したパラジウム錯体と同型のメチル(πーアリル)白金錯体[(πーall)Pt(Me)(PR_3)]を高収率に得ることに成功し、IR、NMR(^1H、^<13>C)、マススペクトル等により同定した。 2 上記白金錯体を真空中、固体状態または溶液状態で熱分解させ、発生気体をガスクロで分析したところ、パラジウム錯体の場合と異なりアリルーアルキルカップリング生成物であるノ-ブテンの発生は全く見られず、プロペンおよびメタンのみ生成することが判明した。また、ノ-ブテンの還元的脱離に対するホスフィンの添加効果は全く見られず、無水マレイン酸の添加で始めてカップリングが促進されることも伴った。しかし、無水マレイン酸の添加により生成すると思われる反応中間活性種の単離には至らなかった。 3 次に上記錯体の電気化学的な性質を調べた。先ずCVスペクトルを測定したところ、錯体は電気化学的に非常に還元され難いが、比較的酸化を受け易いことが伴った(PPh_3錯体の酸化、還元電位はそれぞれ、1.22Vおよび-2.78V vs.Ag/Agcl)。しかし、得られた酸化電位で定電位電解を行ない、酸化により発生する気体成分を調べたところ、THF中、25℃で、50%の比率でノ-ブテンを生成することが判った。この電解酸化によるカップリング促進効果はπー酸添加効果に匹敵するもので、カチオン錯体[(πーallyl)Pt(Me)(PR_3)]^+を経由する機構が提唱された。 4 ジホスフィンの添加による上記πーアリル錯体のσーアリル錯体への変換単離に成功し、その熱的挙動も調べられたが、πー錯体同様カップリングは全く起こらなかった。一方、ラジカル共存下における光反応を試み、金属ーアリル、金属ーメケルのいずれの結合が切断されるかについては、思うように反応が進まず、今のところ迷宮入りの状態にある。
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