研究概要 |
二核銅(II)錯体の銅(II,III)、銅(III,III)への酸化 N-(2ーヒドロキシフェニル)サルシルアミド(H_3L)およびその2ーヒドロキシフェニ基を種々の置換基を導入したものを配位子として二核銅(II)錯体を合成し、その中の一つ(TBP)_2[Cu_2L_2]についてX線構造解析をおこなった。これらはフェノール酸素で架橋された二核構造を有し、強い反強磁性的相互作用を示す(21=-293ー-449cm^<-1>)。これらのサイクリックボルタムグラム(CV)は二つの陽極波を0.33ー0.71および1.02ー1.16V vs.SCEに示し、それぞれ、Cu(III,II)/Cu(II,II)とCu(III,III)/Cu(II,III)に相当する。また、N,N'ービス(3ーオキシー5ーアミノベンチル)マレインイミド(H madpl)を用いて、二核銅(II)錯体[Cu_2(madpl)]を得た。これはCu(II,III)/Cu(II,II)に相当すると考えられCV波を示した。以上の電位は通常の単核及び二核銅(II)錯体の酸化電位に比べて著しく低い。これは、脱プロトン化したアミド窒素の強い電子供与によってCu(III)が安定化した事によると考えられる。 taecコバルト(II)錯体の異常な安定化 コバルト(II)アミン錯体の化学の常識に反し、[Co_2OH(taec)](Clo_4)_2は化学的並びに電気化学的酸化に対し強い抵抗を示す。これは、taecの立体効果によりコバルトが六配位を取りにくい事に原因すると考えられた。そこで[Co_2CO_3(taec)](Clo_4)_2ではCO_3^<2->の特異な架橋構造によってコバルトが六配位を取ることに着目し、その酸化を試みた。この錯体のCVは0.50V vs.SCE.に不可逆波を示した。また、H_2O_2で酸化すれば、Co(III)と考えて矛盾のない吸収帯(531nm、ε=353)が観測された。現在、この溶液から得た[Co_2CO_3(taec)](Clo_4)_4と考えらる粗結晶の精製を行なっている。
|