研究概要 |
1.二つの異なった配位サイトを持つ配位子,N,N'ービス(5ーアミノー3ーヒドロキシーペンチル)マロンアミド(H_4madpl)およびN,N'ービス(5ーアミノ2ーヒロキシーペンチル)ー2'ーフェニルマロンアミド(H_4phmadpl)と酢酸ニッケルとを反応させて,二核錯体[Ni_2(madpl)]・C_2H_5OH(1)および[Ni_2(phmadpl)]・3H_2O(2)を得た.これらの錯体は,共にNi(II,II)/Ni(II,III)とNi(II,III)/Ni(III,III)に相当する陽極波を0.55と1.0V vs.SCEに観測され,容易にNi(III)に酸化が起こることが分かった.室温における有効磁気モ-メント(分子あたり)2.68(1)と3.00(2)と反射スペクトルの結果から,これらの錯体は反磁性正方平面配位のNi(II)と常磁性四角錐配位のNi(II)から成ることが分かった. 2.炭酸イオン架橋コバルト(II)錯体,[Co_2CO_3(taec)](C1O_4)_2・2H_2O(1a)および[Co_2(taec)]X_2・NaX。2H_2O(X=C1O_4(1a');X=BF_4(1b)),[Co_2CO_3(tpmc)]X_2・2H_2O(X=C1O_4(2a);X=BF_4(2b))を合成した(taecおよびtpmcはそれぞれ1,4,8,11ーテトラキス(2ーアミノエチル)ー1,4,8,11ーテトラアザシクロテトラデカン,1,4,8,11ーテトラキス(2ーピリジルメチル)ー1,4,8,11ーテトラアザシクロテトラデカンを示す).このうち1aについてX線構造解析を行った結果,CO_3^<2->の特異な架橋構造のために2個のCoは共に六配位をとっていることが明らかになった.いままで知られているtaecやtpmc錯体は配位子の立体効果のためすべて五配位でそのためCo(II)錯体はCo(III)に酸化され難いことが指摘されてきた.しかし今回合成したCO_3^<2->架橋六配位のtaecおよびtpmc Co(II)錯体はサイクリックボルタンメトリ-で五配位型の[Co_2OH(taec)](C1O_4)_3などと比べると1.0ー0.5Vも低い電位でCo(II)からCo(III)への酸化がおこることを明らかにした.更に,化学酸化によってCo(II,III)混合原子価錯体[Co_2CO_3(taec)](BF_4)_3を単離することができた.
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