研究概要 |
本研究では、ケイ酸塩とホウ酸塩の多成分酸化物融体に関して、1.高温度電気化学測定による溶質金属の酸化環元平衝測定、2.高温度微少熱量計による混合エンタルピ-の直接測定、3.分子動力学法による計算機実験を行った。 〔1〕アルカリケイ酸塩融体中でのCr(VI)/Cr(III)の平衝測定を行った。測定法は電位走査法と微分パルスポラ-ログラフィである。Na_2O・2SiO_2-K_2O・2SiO_2系では組成に対しほぼ直接的に平衝電位が変化することがわかった。アルカリイオンの種類(Li,Na,K,Rb,Cs)を変えた測定ではそのイオン半径の逆数に対してやはり直接的に平衝電位が変化した。電位の変化は数100mVにおよび、Cr(VI)/Cr(III)の酸化還元平衝電位が多成分系酸化物融体の塩基性を規定するパラメ-タとして適切である可能性が見出した。 〔2〕アルカリホウ酸塩融体のアルカリを変えた融体の混合エンタルピタ-を測定した。Na_2O・2B_2O_3-K_2O・2B_2O_2(Na-K系)およびNa_2O・B_2O_3-Cs_2O・B_2O_3(Na-Cs系)の各擬2元系融体について熱量計内部で融体を混合し発生する熱量を850℃において測定した。いずれの系でも負の混合エンタルピ-が観測された。Na-K系ではわずかに非対称なものであったが、Na-Cs系ではかなり非対称で相互作用も負に大きいものであった。後者ではアルカリイオンの置換によりB-0ネットワ-クの組替えが行われているものと考えられる。 〔3〕Na-ケイ酸塩融体とK-ケイ酸塩融体の混合系の分子動力学計算を行った。実験的に知られている負の混合エンタルピ-が計算でも定量的に再現できた。混合に伴う構造と物性の変化についても多くの知見が得られたが、同時に本研究での計算規模による限界も示された。 本研究通じて、実験的研究と計算機実験によるものとを併せて行うことにより、高温での多成分系酸化物融体に関して意義の大きい研究ができるこが示された。今後のこの分野の研究方法が示されたと考える。
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