本研究は従来にない、歯車の左右の歯面を異なる磁極にすることにより、磁石の吸着力又は、反発力を利用して非接触かみ合いやノンバックラッシかみ合いで、しかも実用性を考慮して、プラスチック射出成形歯車の量産を目的としている。本研究は昭和63年度、平成元年度に渡る研究であり、本年度は下記の実験研究を行い、研究実績を上げた。 1.住友ベークライト(株)の協力を得、同社製作のキャビティ及び同社の金型、射出成形機を利用、射出成形実験を行った。プラスチックマグネット歯車を成形時に異方性にすることができ、必要な場所を磁化することができる。プラスチックマグネット歯車の磁束密度は600Gぐらいのものまで加工することができた。しかし、今回は着磁の関係でノンバックラッシかみ合いのみに限定した。 2.磁性粉フェライトの含有量を変えたり、ガラス繊維を含有させた。その結果、フェライトの含有量に磁束密度は比例するが、重量は重くなる。また、含有量が多くなると摩耗量が大きくなる。 3.運転性能試験の結果、予想以上に摩耗が多い。これは相手歯車のかどの当りによるものである。これは一種の切削現象で、グリス潤滑や歯先修正により解決でき、次年度の研究課題である。 4.騒音試験の結果、騒音の減少を目的としたプラスチック歯車同志のかみ合いよりもさらに小さく、騒音防止歯車としてもすぐれている。 以上本年度は左右異極歯形のプラスチックマグネット歯車の試作に成功、さらに一部その性能試験も行ったが、従来見られなかったすぐれた性能も見られ、実用化の目度が立ち、次年度は小形化し、実用化したい。
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