研究概要 |
過冷却液体が温度の低下と共にその粘度を増し,遂に並進の自由度を失うとガラス状態になるが,ガラスを再加熱して溶融させる過程ではガラスの生成条件や加熱速度などに依存して種々な経路を辿りうる.この履歴現象を上手に利用すると,ガラスセラミックスやソルダ-ガラスの結晶化などに有効な応用が可能である. 本年度はガラスソルダ-としての利用を追究しているオキシナイトライド系についてガラス転移点,Tgと結晶化点,Tcを測定し,結晶化熱処理温度の決定に利用し,ソルダ-ガラスの結晶化を実際に観察した.この測定にはDSC(走査型熱量計)を用いたが,TgはDSCの直接測定では精度良く木まらず,比熱の測走から内挿して求めた。オキシナイトライド系では一般にN__ー含有量の増加と共にTgは上昇し,zro_2,P_2O_5等の核発生剤を加えても結晶化は困難になる傾向を示した。この原因は主として粘度の上昇にあると考えられるが,実測のデ-タはほとんとない.そこで,MgーおよびCaーAlーSiーOーN系についてガラスおよびメルト状態における粘度を測定した.ガラス状態の粘度は平行板粘度計,メルトの粘度は新しく開発したトルク直接測定回転粘度計でそれぞれ測定した.測定結果はガラス,メルト両状態においてN__ー含有量の増加に伴い粘度は高くなり,また融点は低下することを示し,結晶化の阻害因子となることが明らかになった. 分子動力系による計算機シミュレ-ションをネットワ-ク構造のガラス形成物質に適用すると,粘度のような非平衡現象を精度良く再現するためには,10^4粒子系以上の巨大なサンプルセルを必要とすることが判明し,現状の計算機では満足できる相似は期待できない.しかし、2000粒子規模の計算で2psステップの3次元配置を詳細に観測し,酸素5配位のSiが過途的に生ずることを見出している。
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