2次の相転移であるガラス転移を冶金スラグのガラス化や結晶化に如何に利用できるか、またガラス転移点Tgを含むなるベく広い温度範囲で、粘度、膨張率、比熱等を測定し、ガラス転移に伴うスラグ物性値の変化挙動を解明し、逆に、測定の容易な低温度の測定値から高温度の値を外挿する方法を見出すことを目的として本研究を行った。しかし、結果的に低温度の測定から高温度の物性を推定する適切な方法は見出せなく、その点で本研究の目的の一部は未解決である。 研究内容は1.粘度測定、2.Tg、Tcの結晶化への利用、3.分子動力学(MD)シミュレ-ションに大別できる。 1.ボロシリケ-ト系、オキシナイトライド系フラックスについて、平行板粘度計(10^<10>〜10^6 poise)と回転粘度計(10^3〜10^0 poise)を用いて広い粘度範囲(対応する温度範囲600〜1600℃)にわたり系の粘度を測定した。粘度の中間領域10^5〜10^3 poiseは直接測定できなかったが、Fulchen関数で良好な内挿が可能であった。なお、TgとFulcher定数T。との間に相関関連は見出せなかった。 2.Tg、Tcはガラスの結晶化熱処理温度に指針を与える。本研究ではセラミックスを接合したガラスソルダ-層の結晶化のため、ソルダ-のTg、Tcを測定して2段熱処理の条件を定めた。このようにして、MgOーおよびCaOーAl_2O_3ーSiO_2ーZrO_2ガラスソルダ-によりセラミックスの良好な接合(200MPa)を得た。 3.Na_2ーSiO_2系について、粘度のMDシュミレ-ションを試み、定性的には粘度の温度、組成依存性を再現することができた。しかし、ネットワ-ク形成系の輸送的性頂を定量的に計算機実験で再現するには、少なくとも20000粒+系で10^5ステップ以上の計算が必要で、現状の計算機客量では客易に実行できない。
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