1.大気腐食加速試験装置を用い、30℃、20ppmのSO_2ガスを含む相対湿度の異なる空気および窒素ガス中における銅薄膜の腐食にともなう重量変化を水晶振動子の共鳴周波数変化から追跡し、前年度におこなったH_2Sガスを含む場合の結果と比較検討し、次の事柄が明らかにされた。 (1)SO_2ガスを含む空気中における銅薄膜の腐食性はH_2Sガスを含む場合に比らべて低く、腐食の初期から放物線則に従って腐食が進行する。また、H_2Sガスと同様、空気中の酸素が腐食を促進する。 (2)H_2Sガスに比らべSO_2ガスでは銅薄膜上の腐食生成物は銅硫化物よりむしろ銅の硫酸塩であることがオ-ジエ電子分光法により同定された。 (3)腐食速度が空気中の相対湿度の増加とともに急激に増加することから、SO_2ガスにおいても銅薄膜の腐食が表面に形成される水膜中での電気化学的機構により進行することが予想される。 2.pH8.4のホウ酸塩水溶液中における銅薄膜のアノ-ド酸化にともなう重量変化を水晶振動子の共鳴周波数変化から追跡すると同時に、アノ-ド酸化電流の経時変化を測定し、アノ-ド酸化皮膜を通しての銅イオンの溶出速度と皮膜成長による皮膜中への酸素とり込み速度とを分離することに成功した。銅イオンの溶出速度と皮膜中への酸素とり込み速度との両対数プロットは直線となり、直線の勾配より酸素イオンの移動係数と銅イオンの移動係数との比、αO^<2->/αcu^<2+>を求めることが可能となった。移動係数の比、αO^<2->/αcu^<2+>はアノ-ド酸化電位に依存せず、1.77±0.15の値をとることが判った。以上、水晶振動子を水溶液中における銅薄膜の腐食研究に適用することにより腐食機構の詳細が明らかとなった。現在、他の金属薄膜の水溶液中における腐食反応の研究を進めている。
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