(1)ピッチとフェノ-ル樹脂の相互作用への圧力効果と生成炭素の組織 ピッチ中に球状のフエノ-ル樹脂粉末を混合し、加圧下炭素化することによって、生成炭素材の光学組織を制御することができることを見出した。10MPa以上の加圧下で、両前駆体は互いに混ざり合い、均一な光学組織を持つ炭素材を与える。7MPa以下の圧力では、両前駆体は別々に炭素化し、フェノ-ル樹脂から生成した等方性組織の炭素材と、ピッチから生成した異方性組織の炭素材の混合物となった。フェノ-ル樹脂の混合割合を変え、10MPa以上の加圧下で炭素化することによって、コ-スモザイク組織から、微細モザイク組織、そして等方性組織まで連続的に変えることができる。炭素繊維/炭素複合材のマトリックスとして望ましい微細組織は、40〜50wt%のフェノ-ル樹脂を添加することによって得られた。ピッチ中に存在する低分子量成分が、このピッチとフェノ-ル樹脂との相互作用に重要な役割を持つと考えられた。 (2)加圧下炭素化による炭素繊維/炭素複合材の試作 炭素繊維/炭素複合材をPAN系短繊維をフィラ-とし、ピッチとポリエチレンテレフタレ-ト(PET)または球状フェノ-ル樹脂をマトリックスとして、30MPaの圧力下、650℃での炭素化によって試作した。PET含有量を20wt% 、マトリックス含有量を60wt%とした場合に、ミディアムモザイク組織を持つマトリックスとなり、ほぼ1g/cm^3の嵩密度が得られた。これを再度マトリックス原料中に埋め、加圧下で炭素化することによって、嵩密度を1.3g/cm^3にまで増加させることができた。ピッチ・フェノ-ル樹脂混合物をマトリックス前駆体とした場合も、加圧下炭素化によってほぼ1g/cm^3の嵩密度が得られた。
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