研究概要 |
ペロブスカイト型構造をとる(Ln_<1-x>Ca_x)MnO_3固溶体(Ln:La,Nd,Gd)を固相反応法により、炭酸塩を出発原料として酸素気流中1300-1350℃にて合成した。これらの酸化物の電気抵抗(ρ)を測定したところ、室温以下でn型の半導体的な挙動を示した。logρと1/Tの関係は非直線的であるが、logρ1/T^4は直線的である。また、ρは酸化物の組成に強く依存していることから、これらの酸化物はアンダ-ソン局在によるパリアブル・レンジ・ホッピング伝導を起こしていると考えられる。室温以上では、ρは正しい温度係数(金属伝導体)をもっている。したがって、これらの酸化物は温度上昇とともに金属-絶縁体転移を起こすことが明らかとなった。また、熱分析よりこの金属-絶縁体転移は結晶相の転移を伴わないことがわかった。磁気測定の結果より、金属-絶縁体転移温度近くで帯磁率に変化が認められた。有効磁気モ-メントを計算したところ、金属-絶縁体転移温度近くでMn^<3+>イオンは低スピン状態から高スピン状態に電子状態が変化しており、この変化が金属-絶縁体転移に重要な影響を与えているものと考えられる。次に、(La_<1-x>Ca_x)MnO_3の微粒子の合成を次の2通りの方法で行った。共沈法によりマンガンノカルサイト型の(Ca_<0.5>Mn_<0.5>)CO_3を前駆体として合成し、ついでこの前駆体を950℃で熱分解させることによりCaMnO_3を得た。また、酢酸塩を出発原料として固相反応法により900℃にて(La_<1-x>Ca_x)MnO_3を得た。これらの方法は、従来の炭酸塩を出発原料として用いた方法にくらべて300〜400℃も合成温度を下げることができた。得られた酸化物は0.8〜0.9μmの粒径をもち、比表面積は3〜5m^2/gであった。これらの微粒子に水を吸着させた際の電気抵抗の変化を調べたところ、CaMnO_3のみ水蒸気圧が高くなるにつれて電気抵抗は減少した。これはCaMnO_3表面に吸着した水の層を通してのイオン伝導が寄与しているものと考えられる。
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