研究概要 |
非晶質合金は水素化や脱水素反応に対して単位表面積当たりの活性は高いが,比表面積が小さいため,単位質量当たりの活性は常法により調製された触媒より低い。本研究では,非晶質合金の特徴を有し,しかも単位質量当たりの活性が高い触媒の開発を目指して広表面積非晶質合金を合成することを目的とした。その手法として,亜鉛のような卑金属原子を合金表面層にド-プし,これを酸またはアルカリ溶液中へ溶解させる方法を考案した。ド-ピング法として,1)卑金属微粉末と非晶質合金粉末を混合加熱,2)粉末合金表面にギ酸亜鉛を吸着させ,これを加熱分解,の2法を試みたが,後者の方法がより適当であった。次にド-プした金属の溶解の条件を検討し,1.3Mのカセイソ-ダ溶液にて55℃で処理するのが最適であるとの結論を得た。この方法により,数m^2 g^<-1>の比表面積を有する非晶質合金が得られた。表面積,CO吸着量はその後の酸素処理とそれに続く水素処理によって更に増大する。非晶質状態を保つには,酸素処理温度は250℃以下でなければならないが,CuーZr系合金の場合,表面積が6m^2 g^<-1>,CO吸着量が3.4μmol g^<-1>のものが得られた。 これらの非晶質合金はブタヂエンの水素化あるいはメタノ-ルの脱水素反応に高活性を示した。活性,選択性は反応前の穏和な条件での酸素処理によって大きく変化することが分ったので,特にCuーTiおよびCuーZr系多孔性非晶質合金のメタノ-ル脱水素反応に対する触媒能が酸素前処理条件によりどのように変化するか調べたところ,酸素処理を200ー250℃で行ない,これに続いて200℃にて水素還元を行なうのが最適であると分結論を得た。反応温度と共にメタノ-ル転化率は上昇するが,脱水素反応生成物であるギ酸メチルへの選択性は250℃以上では急激に減少した。CuーZr系合金から転化率が30%でギ酸メチル選択性が80%以上の触媒が得られた。
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