研究概要 |
本年度の成果を以下に記す。 9-メチルアントラセン(0.1M)をt-BuOK(0.2M)存在下、HMPA-t-BuOH混合溶媒中で酸素酸化すると、アントラキノンが選択的に得られた。これに対して、2-メチルアントラセンやアントラセンを基質とした場合にはアントラキノンが全く得られなかった。機構的に興味が持たれる。 極性溶媒中、NaOHと塩化コバルト(II)存在下でp-クレゾ-ルを酸素酸化すると、合成中間体として重要なp-ヒドロキシベンズアルデヒドを合成することが可能であるが、NaOH 4.5M、CoCl_2 0.1M、MeOH-t-BuOH(1:1V/V)混合溶媒中、反応温度60℃でp-クレゾ-ルを50時間酸素酸化したところ、基質転化率90%で、p-ヒドロキシベンズアルデヒドが66%の選択率で得られた。HMPAのような非プロトン性極性溶媒中ではp-ヒドロキシベンズアルデヒドの生成選択率が10%と極端に低く、メタノ-ル、エタノ-ル、t-ブタノ-ルといった、単独溶媒中では高々38%の収率でp-ヒドロキシベンズアルデヒドが得られたに過ぎなかった。また、遷移金属塩の触媒効果を比較したところ、ニッケル、鉄、マンガンの塩化物に対して塩化コバルト(II)の活性が飛躍的に大きかった。生成物分布の結果から、コバルトの場合には他の金属の場合に比べて、基質由来ラジカルの二量化に基づく4,4'-ジヒドロキシジフェニルメタンや4,4-ベンゾフェノンの生成量が少なかった。コバルト系触媒については、Co_3O_4以外の塩では概ね満足すべき結果が得られた。 上記の知見は合成化学的に意義深いものであるが、溶媒や触媒の効果を含めて、反応機構の詳細について現在検討中である。
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