本年度は腫よう部分の検出および画像化用の配位子の合成主研究課題として研究を行った。これまでの腫瘍部の検出とその画像化は、化学ブローブが正常細胞と癌細胞を認識し、両者に対する集積性に顕著な差異が示すことが要求されている。また癌細胞に対する集積性があれば、プローブの分子構造の特徴か、分子内に標識化した元素を追跡する物理化学的手段(例えば光化学的、放射性、または核スピン)を選択し得る。腫瘍部に集積性のあるテトラピロール化合物、ポルフィリンは強い螢光を発するために光化学的な手法により表層部を検出可能である。深部についてはそのマンガン錯体による電子スピンをプローブとした3次元画像化が試みられている。さらに放射性元素を高感度のプローブとしてこれまで報告例にないヨウ素を含むポルフィリンの合成を行った。天然由来のプロトポルフィリンのビニル基をヨウ素で置換したものを高い収率で得ることに成功した。これにより高度に希釈した放射性ヨウ素(^<131>I、半減期、8日)を含むヨウ素をポルフィリン核に1ー2個導入し得る。したがってプローブ集積部は通常の高いエネルギー線源部となるために容易に探知し得る。さらにこのポルフィリン誘導体は螢光測定も可能であるために、レーザー照射による画像化が期待しうる。しかし生体に静注するために高い水溶性が要求されるが、ヨウ素を含む誘導体の水溶性をさらに高める必要がある。また予備的な研究では、この鉄錯体はアポ蛋白質に結合し安定なヘム蛋白質が得られるので、プローブのキャリアーとして考慮したい。
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