人体の腫瘍部の検出とその3次元画像化を行うための化学プロ-ブの合成は物理化学的手段との組み合わせで多様なアプロ-チが可能である。本年度は生体系中では殆ど存在しないフッ素を含む色素を用い、核磁気共鳴吸収測定法により検出感度の高いフッ素をモニタ-し、腫瘍部に集積した化学プロ-ブとするための合成を行った。分子中に含まれるフッ素の比率が直接感度に反映するために、色素にはベルフルオロアルキル基を持つ化合物が必要である。しかし通常の含フッ素有機化合物を生体へ注入する場合、水に対する溶解性が乏しいためにこれを改良する必要があった。従ってプロ-ブとなる色素の水溶性を高めるために、複数の親水性の周辺置換基を導入する合成を計画した。ペルフルオロアルキル基とパラ置換ペンゾイル基をもつオレフィンを合成し、これにイソシアノメチルトシレ-トを反応させて収率良くピロ-ルを得る。さらにベンゾイル基を還元してベンジル基に変換し、ホルミル化、そしてホルミル基を還元した後、環化してポルフィリンを誘導した。パラ位のエステルを加水分解するとテトラカルボン酸となり、生理的条件下で水に可溶化する。また水溶性ペルフルオロアルキル置換ポルフィリンは、蛍光測定により生体組織中の分布状態が調査可能であり、さらにその各種金属錯体としても水溶性を保持しているために、核磁気共鳴吸収及び電子スピン共鳴の両方を測定手段として使用し得る。現在ホモジナイズされた腫瘍組織に集積した色素は種々の物理化学的手段で検出可能であるが、生体組織中の正常、腫瘍細胞の集積選択性、検出法に対する集積濃度の検出限界の向上、及びハ-ドシステムの画像化機器の検討が必要である。
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