1.炭素ー炭素結合形成能に富む配位不飽和活性種を効率良く広範な基質で発生しうる触媒前駆体、Ru(C_5R_5)(C_3H_5)X_2を各種合成し、その代表例(R=Me;X=Br)についてX線構造解析にも成功した。これらのルラニウム(IV)化合物は、多様な共役ジエンの存在下、トリエチルアルミニウムと反応させるとジエンの低重合活性を示すRu(C_5R_5)(ジエン)Xに誘導できることを発見した。これら共役ジエン錯体は不飽和基質の存在下に銀トリフラートと処理することにより、共役ジエンと不飽和基質間に炭素ー炭素結合生成をおこすことができることを明らかにした。 2.ブタジエン錯体Ru(C_5H_5)(C_4H_6)Brを過剰のブタジエンの存在下に銀トリフラートと反応させると、二分子のブタジエンがカップリングし配位子となった〔Ru(C_5H_5)(1ー4:7ー8ー7ーC_8H_<12>)〕OTfが生成した。このカチオン錯体の二次元NMR解析によりジエン部位がトランソイド配位した構造が示唆された。またこのカチオン錯体はブタジエンの直鎖三量化の良好な均一系触媒となることを発見した。一方ペンタメチル誘導体であるRu(C_5Me_5)(共役ジエン)Xと銀トリフラートから誘導される配位不飽和カチオン活性種はブタジエンおよびイソプレンの触媒的環化二量化による、シクロオクタジエン骨格構築の高選択的な触媒となることを見いだした。とくにイソプレンの環化二量化触媒反応は位置選択的に頭ー尾結合する点は注目に値し、その量論的モデル反応による証明も行った。 3.Nーアリルトリクロロアセトアミド類の触媒的ラジカル環化反応に、塩化第一銅とビピリジンの組み合わせが著しい触媒活性と選択性を示すことを発見した。この触媒的ラジカル環化は従来の有機スズを用いる量論反応の欠点である環元体の生成や高希釈条件を必要とせず、室温ないしそれ以下でピロリジン骨格を炭素ー炭素結合生成モードで構築できる有効な触媒反応である。
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