研究概要 |
1.複数の不飽和基質間で触媒的に効率良く炭素ー炭素結合生成を行う目的に従来ほとんど知見のなかった高原子価ルテニゥム有機金属錯体がきわめて有効なことを実証した。なかでもほとんど例が知られていなかった4価ルテニウムの有機金属化合材を多数合成・構造決定するとともに,その金属ー炭素結合の反応挙動を詳細に検討し均一系触媒作用を担う素反応を解明した。それらの知見にもとづきルテニウム2価と4価の間でおこる2電子酸化還元を駆動力とする共役ジエンの高選択的な触媒的低重合に成功した。すなわちシワロベンタジエニル(Cp)またはそのペンタメチル置換体(Cp*)を支持配位子とするルテニウム・カチオン活性種が炭素骨構築に選択的に作用することを〃CpRu+種によるブタジエンの直鎖三量化,ペンタジエンの直鎖二量化,〃Cp*Ru+〃種によるブタジエン,イソプレンの位置およびペリ選択的環化2量化による炭素8員環骨格構築,ペンタジエンの位置選択的二量化を実現することによって証明した。さらにCーC結合生成段階の機構解明のため,共役ジエン錯体と共役ジエン間の量論反応をも詳細に検討し反応機構を解明した。 2.銅ならびにルテニウムの1電子酸化・還元を,従来スズヒドリドなどを用いた希釈条件下でのみ進行するとされていた,ラジカル環化反応の推進力として利用することにより触媒プロセス化することに成功した。この触媒的ラジカル環化の手法はCーC結合生成を鍵とする5員環ラクタム,ラクトン類の骨格構築の新しい方法論となったばかりでなく,これら手法を立体選択的1,2ー不斉誘導,連続的ラジカル環化による環化による双環骨格構築を1段階で可能とする拡張も行った。 3.高次元の反応場制御のための斬新なメリジオナルC2キラル不斉配位子の設計・合成・錯体化とその構造決定,ならびに新規配位子(Pybox)の不斉誘導機能の発現に成功した。
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