光プロ-ブ法による三成分高分子溶液の臨界点近傍のダイナミックスの研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63470085
• 研究機関: 東京農工大学
• 研究代表者: 牛木 秀治 東京農工大学, 工学部, 助教授 (40160238)
• 研究分担者: 田中 文彦 東京農工大学, 工学部, 助教授 (50107695)
• キーワード: 三成分高分子溶液 / 蛍光偏光解消 / 発光時間分解減衰曲線 / コイル・グロビュ-ル転移 / 臨界溶媒 / 光架橋 / 高分子会合 / 溶媒和

研究概要

本課題では前年度に継続して三成分高分子溶液中の高分子の形態と分子運動に関して、光プロ-ブを用いた基礎的な研究を行った。
(1)混合溶媒中の高分子の分子運動---カルバゾ-ル基含有ポリ酢酸ビニルのベンゼン・シクロヘキサン混合溶媒中での慣性半径(GPCと粘度測定による)、セグメント拡散係数(レ-ザ-パルスによる蛍光発光時間分解減衰曲線による)、側鎖の回転拡散係数(同異方性比による)などの溶媒混合比依存性を調べた。とくに温度濃度をコントロ-ルして溶媒の臨界点に近づけた時の挙動を中心に測定中であるが、前出理論(田中・牛水 Macromolecules)と比較検討する段階に至らなかった。このテ-マは選択吸着、共同溶解(cosolvency)などの問題と密接に関係し、分子論的理解が確定していないので、今後光プロ-グ法の応用分野として研究を継続する予定である。
(2)光架橋性高分子の分子運動---単一溶媒中でも2成分共重合体の場合には分子レベルでの臨界現象や相転移がみられる。アクリル酸メチルを主鎖ベ-スにとり、これに光照射でダイマ-を形成する9-アントリルメチルアクリレ-ト(架橋剤)、検出用の光プロ-ブとしてN-ビニルカルバゾ-ルを少量共重合させた三成分系の高分子について、ダイマ-形成反応と主鎖の分子運動との関係を調べた。この二つの現象は密接に関係していて、分子鎖に沿ってとなり合う基の反応と、遠くはなれた基が空間的にまわり込んで起こる反応とが競合し、2つのタイムスケ-ルが出てくることが分った。
(3)高分子会合--1成分が強く会合を起こすような三成分高分子系では、分子内会合、分子間会合(極限的にはゲル化)の現象がみられる。光プロ-ブ法を用いた会合現象の研究を計画しており、現在、ゲル化(物理ゲル)や水和による相挙動の理論的研究を行っている。

研究成果

• [文献書誌] H.Ushiki and K.Horie: "Influence of Molecular Structure on Polymer Photophysical and Photochemical Properties" Handbook of Polymer Science and Technology(Ed.byN.P.Cheremisinoff,Marecel Dekker Inc.). 14. 1-62 (1989)
• [文献書誌] F.Tanaka and H.Ushiki: "Chain Conformation in Ternary Polymer Solutions" Macromolecules. 21. 1041-1046 (1988)
• [文献書誌] F.Tanaka: "Effect of Chain Association on the Viscosity of Dilute Ionomer Solutions" Macromolecules. 21. 2189-2195 (1988)
• [文献書誌] F.Tanaka: "Theory of Thermoreversible Gelation" Macromolecules. 22. 1988-1994 (1989)
• [文献書誌] F.Tanaka and Matsuyama: "Tricriticality in Thermoreversible Gels" Physical Review Letters. 62. 2759-2762 (1989)
• [文献書誌] F.Tanaka: "Thermodynamic Theory of Network-Forming Polymer Solutions 1.2." Macromolecules. (1990)
• [文献書誌] F.Tanaka,M.Doi and T.Ohta: "Space-Time Organization in Macromolecular Fluids" Springre-Verlag, 207 (1989)