本研究では次の3つの単分散性グラフト共重合体の合成とその溶液物性の研究を行った。(1)幹と枝とが化学的性質の同じものから成るグラフト共重合体のモデルとして、1本の腕を部分的に重水素化して標識した星型ポリスチレン、(2)幹と枝とが異種の分子種からできた星型グラフト共重合体、(3)幹の中央付近に多数の異種高分子鎖をグラフトした共重合体、の3つである。 (1)については、化学的同種の標識であるので小角中性子散乱を用い、二硫化炭素中で、腕鎖の星型中心部付近を標識したもの、外部付近を標識したもの、の散乱強度を測定した。その結果、腕鎖は中心に近いところで外部末端部分に比べて2倍程度に膨張していること、またセグメント対相関はガウス鎖近似と大きく異なることが示唆された。 (2)を合成した目的は、(1)に対応して光散乱測定が可能な星型グラフトを得ることである。腕1本をポリ(2-ビニルナフタレン)、他の腕をポリスチレンとするものである。まず、ポリ(2-ビニルナフタレン)と結合剤部分となるポリ(4-ビニルフェニルジメチルビニルシラン)とのブロック共重合体を合成、それに腕ポリマ-となるリビングポリスチレンをカップリング反応でグラフトした。この方法で目的物の合成に成功した。 (3)では、幹がポリスチレン、枝がポリエチレングリコ-ルから成るグラフト共重合体を用い、それが1-メチルシクロヘキサノ-ル中で形成するミセルの構造を光散乱法により調べた。臨界ミセル濃度は30〜45℃付近で温度に大きく依存すること、また、会合体の形状は充填された球状ではなく、大きな拡がりを示し、見掛けの分子量、慣性半径、流体力学的半径、そして散乱関数から、ミセル形成初期では棒または紐状、十分成長したミセルでは、中空球又は円板状をしていることが示唆された。
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