(1)試料としての高強度・高弾性率高分子繊維、フィルムをすでに確立されている条件でゾ-ン延伸、ゾ-ン熱処理し作製し、動的粘弾性を測定した。合わせて、高次構造に関する諸因子を測定し動的弾性率や力学分散との対応検討した。 (2)分子鎖配向の動的粘弾性に与える影響の中から主なるものを示すと(a)非晶鎖配向係数の増大は動的弾性率を向上させ、主分散を高温側にシフトさせる。(b)主、副分散を含め、より大きいセグメントに関与する非晶分散ほど高次構造に敏感でピ-ク強度、ピ-ク温度に影響する。 (3)結晶化度は動的弾性率と比例関係にある。特に高温域の弾性率に関係する。しかし、結晶配向度、結晶粒子の大きさの影響は小さい。結晶分散は高弾性率材料ほど高温に生じ、結晶が強固になることを示唆する。 (4)形態学的に見るとフィブリル化や構造組織の均質性の程度が高いほど動的弾性率が高く、結晶、非晶力学分散が高温に生ずる。 (5)高強度・高弾性率高分子材料ても粘弾性体であるので、これを粘弾性モデルを用いて考察した所、力学挙動を説明できることが分かった。 (6)研究成果の公表に努めナイロン6、ポリエチレンテレフタレ-ト、ポリエチレン、ポリビニルアルコ-ル、ポリプロピレン、ポリエ-テルエ-テルケトンなどのポリマ-について、研究期間内に研究発表14件と学術論文10編を発表した。これらの発表は動的粘弾性のみでなく、試料作製、高次構造、引っ張り特性などとの関連で考察している。また、高強度・高弾性率高分子材料の動的粘弾性を考察する上で参考になるので、研究期間内に完成した著書4編と特別講演10件及び総説2編を含む研究成果報告書を作製した。
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