走査トンネル顕微鏡(STM)ナノスコーブΙ型は昨年秋に到着し、直ちに研究に入った。高分子試料をのせる基板のグラファイトのSTM像は良好な観察結果が得られ、グラファイト表面の蜂の巣型構造を確認しえたが、これに高分子超希薄溶液(ポリスチレン等)の液滴をのせ、溶媒蒸発後高分子像を観測する試みはまだ成功していない。その理由として吸着分子のSTM像をうるためには基板が (a)できるだけ平坦 (b)高分子を通しての充分な電流量 のほかに (c)基板表面上での高分子のモビリティ(可動性)の抑制 が必要と考えられる。 グラファイト表面上では吸着力等の問題もあり吸着分子が滑り易く、また溶媒の蒸発によって吸着高分子が動き、更に液滴の表面張力によって高分子が溶液周辺部に凝集するためではないかと考えられている。 現在の状況を突破するためには (1)もっと広範囲のSTM像の走査(スキャン)を可能とするXーYステージの導入と (2)別の吸着固定化法、例えばガラス状カーボンを基板として使用することなどを検討しつつある。
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