1.相溶性高分子であるポリスチレンとポリビニルメチルエ-テルの混合物の溶液について、応力緩和、複屈折の緩和、動的粘弾性、誘電緩和を測定し、それらの結果に基づいて次の結論を得た。 (1)比較的短時間(高周波数)の領域において弾性率が一定になる平坦領域が存在する。この領域では応力はすべての高分子鎖の間のからみ合い網目によって生じている。 (2)短い高分子鎖どうしのからみ合いによる網目は最初に消滅する。その緩和時間は長い高分子鎖の分子量によって変化しない。 (3)次の段階において、長い高分子鎖と短い高分子鎖とのからみ合いによる網目が消滅する。 (4)短い高分子鎖の関与する網目構造が消滅した後の緩和過程では、長い高分子鎖の緩和挙動は、通常の低分子液体中におけるものと同じである。 2.上述の測定を行う過程において、動的粘弾性と複屈折測定を組み合わせることにより、振動変形下での複屈折測定に成功した。これにより複屈折測定の時間(周波数)域が、当初より2ケタ以上拡大された。 3.強制レ-リ-散乱法によって、ポリビニルメチルエ-テル中におけるポリスチレン分子の拡散係数を測定して、次の結果を得た。 (1)トレ-サ-用色素と結合したポリスチレンはポリビニルメチルエ-テル中で凝集する傾向があり、正しい測定を行うには、色素量、光量等に関して適当な条件を設定しなければならない。 (2)拡散係数の分子量による変化の解析から、ポリビニルメチルエ-テル中でのポリスチレンの拡散は、ポリスチレン中における自己拡散と同じ機構によると推定される。
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