末端にアミノ基を持ち鎖長の制御されたポリマ-、および鎖末端にカルボキシル基を持ち分子量および分子量分布の制御されたポリマ-を合成し、それらの混合物が鎖末端でカルボン酸アンモニウム基となるとともにブロック共重合体と同様のミクロ相分離構造を形成することを電子顕微鏡観察とX線小角散乱測定により確認した。次に、塩基性溶媒で洗浄することによりカルボキシル基をもつポリマ-成分を取り除き、空孔の形態や大きさが制御され、かつアミノ基を有する多孔質膜を作成した。具体的には、ポリマ-の両末端または片末端にアミノ基を持ち、かつ分子量分布の狭いポリスチレンをリビングアニオン重合により合成し、市販の両末端にカルボキシル基を持つポリエチレノキシド(PEO酸)を再沈澱により精製して実験に使用した。これら二つのポリマ-をアミノ基とカルボキシル基について等モル量になるように秤量して両者をベンゼンに溶解し、凍結乾燥した後、再びベンゼンに溶解して薄膜にキャストしてサンプルとした。この薄膜の透過型電子顕微鏡(TEM)観察による明瞭なラメラ状の高分子集合構造が形成されていることが明らかとなり、その恒等周期を求めることが出来た。さらに、X線小角散乱測定から得られる恒等周期はTEM観察によるものとよく一致し、両成分ポリマ-の合計の分子量に対応する値であった。両末端に官能基を持つポリマ-同士では集合構造の規則性が高く、片末端官能基のポリマ-同士の組合せでは明瞭なX線小角散乱ピ-クを観察し難い程度の規則性となった。KOH-メタノ-ルで薄膜を洗浄すると、PEO酸成分は定量的に除かれ、多孔質膜となることがわかった。恒等周期は元の集合体のそれよりも大きくなるが規則性は保持されており、この方法により、10〜30m^2/gの大きな表面積とアミノ基を持つ構造の規正された多孔質膜が得られることが明らかになった。
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