研究概要 |
1.ポリペプチド固体マトリックス中での光異性化に伴う不斉誘導ポリ(γ-メチルL-グルタメート)の固体フィルム中に、ビフェニール、ビナフチル、ビアントリルなどの面不斉プロクラル化合物を分散させて円二色性スペクトルを測定した。これらの系は不斉場によって誘導される強い円二色性を示すことが明らかになった。しかし光照射の前後における円二色性の変化は小さく、実用的な記録材料の媒質としては不適当であることがわかった。 2.磁場下で配向したポリペプチド液晶ゲルの作製……強い不斉場をもつ新しいマトリックスとして、ポリペプチドの液晶を磁場によって配向させた状態で化学架橋して構造を固定することを試みた。まず液晶構造を保ったまま架橋できる条件を見出すため、種々のジアミノ化合物をポリ(γ-ベンジル L-グルタメート)の濃厚溶液に混合させた。その結果、α,ω-ジアミノエチレンイミンを用いると所期の目的が達せられることがわかった。さらに試料を本補助金で購入した21kガウスの磁場中に固定し、架橋させることによって一定方向に配向した液晶ゲルを作製できることがわかった。 3.アゾベンゼン基をらせん状に配列させたポリペプチドの合成……アゾベンゼン基を側鎖に結合した非天然アミノ酸、p-フェニルアゾフェニルアラニンを合成し、それを一成分とする定序配列ポリペプチドを合成した。このポリペプチドは溶液中でα-ヘリックス主鎖構造をとり、側鎖のアゾベンゼン基もヘリックスに沿ってらせん状に配列していることが円二色性スペクトルによって確かめられた。紫外、可視の光照射によってアゾベンゼン基のトランス-シス光異性化を行わせると、円二色性や旋光度の変化も誘起されることが分った。またこの時側鎖は光異性化するが、主鎖は右巻α-ヘリックス構造に保たれていた。
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