課題の研究のために主に4つの小課題について研究した。1)ではスチレン-アクリル酸長鎖アルキルエステル交互コポリマ-の両モノマ-単位のα位に順次メチル基等を導入した5種の粗い目の櫛状高分子を合成し、そのアルキル側鎖の結晶化を示差走査熱量計によって測定した。その結果、スチレン単位のフェニル基とこの順次置換されるメチル基に基づく主鎖の剛直化が側鎖の結晶化に大きく影響するこを示した。2)では既報の2ーアルキルトリメチレングリコ-ルと脂肪族二塩基酸より得られるポリエステル型櫛状高分子の二塩基酸成分をヘンイコサン二酸にまで延長し、櫛の歯である2ーアルキル基の間隔が主鎖の15、19、23、26原子ごとである櫛状高分子を合成した。そして側くさたの結晶化を1)と同じ手法により測定し、このような脂肪族ポリエステル型櫛状高分子は柔軟な主鎖を持つ故に、櫛の歯が非常に粗い目になっても結晶化することを示した。またこの程度に粗い目になると、側鎖のみならず主鎖のメチレン鎖も結晶化に関与することも分かった。3)では長鎖アルキンをW、Mo系触媒によって高重合させ、主鎖に炭素-炭素二重結合を含んで剛直な主鎖を持つ長鎖ポリアセチレン型櫛状高分子を合成し、側鎖の結晶化を測定した。その結果、この型の櫛状高分子は対応するポリオレフィン型のものに比べて側鎖の結晶化の程度が小さく、やはり主鎖の剛直さが側鎖の結晶化を抑えることを示した。4)では2-アルキルトリメチレンジアミンを合成し、脂肪族二塩基酸塩化物と重縮合させてポリアミド型の粗い目の櫛状高分子を合成した。アミド基はエステル基に比べ剛直であると考えられ、対応するポリエステル型櫛状高分子と比較しところ、やはりポリアミド型の方が側鎖の結晶化の程度が低かった。以上結合し、従来提出していた結晶化した櫛状高分子の構造モデルから考察して、櫛状高分子の主鎖の剛直さが側鎖の結晶化に及ぼす影響を確かめることができた。
|