ゼノバイオティクスに対する代謝応答機構の解析と栄養制御

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63470108
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 吉田 昭 名古屋大学, 農学部, 教授 (70035377)
• 研究分担者: 小田 裕昭 名古屋大学, 農学部, 助手 (20204208)
• キーワード: ゼノバイオティクス(生体異物) / 血清コレステロ-ル / ビタミンC / 培養肝細胞 / アポリポタンパクA-I / HDL-コレステロ-ル / PCB

研究概要

現代の工業化社会の食生活では種々の人工有機化合物(ゼノバイオテイクス)を摂取する機会が多く、それらによる代謝変動と栄養制御に関する知見が重要である。本研究では特に成人病と関連の深いコレステロ-ル、ビタミン代謝、ならびに肝小胞体による変異原物質の活性化などを中心に研究している。今年度の成果は次の通りである。
1.ラット初代培養細胞におけるゼノバイオティクスのビタミンC(AsA)代謝への影響:全動物による実験で飼料ゼノバイオティクスがラット体内でのAsA合成を促進させ、血清コレステロ-ル濃度を上昇させることを見出したので、より単純な系でその機構を明らかにするため、ラットの初代培養肝細胞を用い、培地にPCBを添加し、AsA代謝に及ぼす影響を調べた。分離肝細胞をWE培地で培養し、培地に6μMのPCBを添加するとして24時間培養後に薬物代謝酵素活性は著しく上昇し、同時に細胞内AsA濃度も増加し、in vivoと同様の影響が培養細胞においても観察された。AsA合成に関与するUDP-グルクロニルトランスフェラ-ゼの活性、^<14C>-グルコ-スからAsAへの^<14C>のとり込みの何れもがPCBによって増加し、ゼノバイオティクスはホルモンなどの介在によらず直接肝細胞に作用してAsAの合成を促進し、生体防御に役立てることが明らかになった。
2.ゼノバイオティクスによる高コレステロ-ル血症の誘導と血清リポタンパク質の変動:ゼノバイオティクスがかなり一般的に高コレステロ-ル血症を誘導し,肝でのコレステロ-ル合成が促進されることを前に報告したが、コレステロ-ル代謝に重要なリポタンパク質の分布状態、アポリポタンパク質組成の変動を解析し、ゼノバイオティクスの摂取では、HDL-コレステロ-ルの方がむしろ増加し、アポA-Iが増加する特異性を有することを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] F.Horio,K.Ozaki,H.Oda,S.Makino,Y.Hayashi,A.Yoshida: "Effect of dietary ascorbic acid,cholesterol and PCB on cholesterol and bile acid metabolism in a rat mutant unable to synthesize ascorbic acid." J.Nutrition. 119. 409-415 (1989)
• [文献書誌] H.Oda,Y.Okumura,Y.Hitomi,K.Ozaki,S.Nagaoka.A.Yoshida: "Effect of dietary methionine and polychlorinated biphenyls on cholesterol metabolism in rats fed a diet containing soyprotein isolate." J. Nutr.Sci.Vitaminol.35. 333-348 (1989)
• [文献書誌] Y.Hitomi,A.Yoshida: "Effect of methionine and threonine on the hypercholesterolemia induced by polychlorinated biphenyls in rats fed a nonprotein diet." J. Nutr.Sci.Vitaminol.35. 589-596 (1989)
• [文献書誌] S.Mochizuki,A.Yoshida: "Effect of dietary ethnol on ascorbic acid and lipid metabolism,and liver drug-metabolizing enzymes in rats." J. Nutr.Sci.Vitaminol.35. 431-440 (1989)
• [文献書誌] Y.Aoyama,E.Ohmura,T.Kato,A.Yoshida: "Effect of dietary supplement of excess histidine on liver lipids and serum cholesterol in rats fed diets varying in casein levels and Protein quality." Nutr.Rep.International. 39. 1183-1193 (1989)
• [文献書誌] A.Yoshida,H.Naito,Y.Niiyma,T.Suzuki(eds).: "Nutrition:Proteins and Amino Acids" Japan Scientic Societies Press,Springer-Verlag, 347 (1990)