研究概要 |
工業化社会の生活では環境化学物質,薬剤など種々の人工有機化合物(ゼノバイオティクス)を摂取する機会が多く,それらによる代謝変動機構の解析と栄養制御に関する知見が重要である。ゼノバイオティクスは基本的に肝小胞体のチトクロムP450酵素で代謝され,その活性には栄養素が大きく影響する。今年はP450誘導に対するビタミンC(AsA)の役割についてさらに研究するとともに,肝小胞体の変異原活性化能に対する食餌タンパク質,ならびにゼノバイオティクスの影響について検討した。(1)肝P450と食餌AsA:遺伝的にAsAを合成できないODSラットにAsA欠乏飼料を与えると,約15日で体重増加が停止し,肝P450も減少した。PCB添加によるP450の誘導もAsA欠乏で低下した。フェノバルビタ-ル(PB)誘導型のアミノピリンーNーデメチラ-ゼ活性も低下したが,メチルコラントレン(MC)誘導型のベンズピレンヒドロキシラ-ゼ活性のPCBによる誘導はAsA欠乏の影響を受けなかった。PB型のアポP450b,eのmRNAはAsA欠乏で有意に低下し,MC型のアポP450c,dのmRNAはAsA欠乏による影響は受けなかった。これらの実験から,AsA欠乏により低下するのはPB型のP450であり,アポP450mRNAの低下が関与していることが示唆された。(2)肝小胞体の変異原活性化能と食餌タンパク質,PCB:多くの変異原は肝小胞体のP450で活性化されたり,不活性化されたりする。食餌への少量のPCBの添加は肝小胞体のTrpーPー1,GluーPー1,および2ーAminofluorereの変異原活性化能を著しく増強し,また,食餌タンパクレベルを増加させることによりこの影響はさらに増強されたが,それぞれの変異原によってそのパタ-ンは異っていた。PCB以外のゼノバイオティクスによっても種々検討し,これらの物質や栄養条件が体内における変異原物質の活性化に大きく影響することが示された。
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