研究概要 |
1.新型多価不飽和脂肪酸の脂質代謝調節能:中国産Biota orientalis種子から高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を中心に特殊な二重結合配置を持つエイコサテトラエン酸(5C,11C,14C,17C-20:4)を高純度(96%)に調製し、予じめ無脂肪食で飼育し必須脂肪酸欠乏状態のラットに1日当り100mg、3〜10日間経口投与し、種々の脂質パラメーターについてリノール酸、α-リノレン酸およびγ-リノレン酸と比較した。その結果、この新型脂肪酸は比較したいずれの脂肪酸より肝臓コレステロールおよびトリグリセリド濃度低下作用に優れ、血清脂質も低値を与える傾向にあることが認められた。しかし、動脈壁によるプロスタサイクリン、血小板によるトロンボキサンA_2産生に対する効果は他の脂肪酸と同等であった。なお、これらエイコサノイドのHPLCによる測定の有用性についての基礎的成績が得られた。新型脂肪酸は組織脂質に取り込まれ不飽和化されたが、必須脂肪酸欠乏の改善効果はn-6系脂肪酸に匹敵した。 2.灌流肝臓における新型多価不飽和脂肪酸の代謝:微生物によって産生された奇数炭素数多価不飽和脂肪酸(5C,8C,11C,14C-19:4)をラットの単離肝臓を用い灌流し、アラキドン酸(20:4)およびオレイン酸(18:1)と比較した。その結果、この奇数酸はケトン体への酸化速度はアラキドン酸より有意に高く、オレイン酸と同程度であったが、トリグリセリドとしての放出はアラキドン酸と同様に、オレイン酸より高かった。コレステロールの分泌もトリグリセリドの場合と類似した応答を示した。しかし、灌流後、肝臓コレステロール濃度は奇数酸で高い傾向にあった。19:4酸は肝臓において一部は長鎖不飽和化されたが、その程度はアラキドン酸の場合より著しいようであった。 以上の結果は、非天然型多価不飽和脂肪酸の脂質代謝調節における特異的機能を示唆するものであり、系統的な研究の必要性を指摘した。
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