研究概要 |
枯草菌における異種蛋白質高能率分泌生産系を確立するに当たり、クロ-ン化したセルラ-ゼ遺伝子を用いた分泌ベクタ-を開発し、分泌促進遺伝子を用いた生産量の増加を試みた。 1.既存の分泌促進遺伝子の利用 まず宿主由来のセルラ-ゼ、ヌクレア-ゼの生産量に対して、sacQ,degU,prtRの各分泌促進遺伝子が上昇効果を及ぼすかどうかについて検討した。その結果、degU,prtRについてはセルラ-ゼ、ヌクレア-ゼのどちらの活性をも上昇させる効果を有することが認められた。そこでクロ-ン化したセルラ-ゼ、ヌクレア-ゼ遺伝子を保持するプラスミド、並びに前年度に構築したβ-ラクタマ-ゼ分泌ベクタ-中に更に分泌促進遺伝子を導入し促進効果を及ぼすかどうかについて検討したが、いずれの場合もそれぞれの遺伝子産物の生産量上昇は認められなかった。 2.新しい分泌促進遺伝子のクロ-ン化 枯草菌の染色体DNAのSacl消化物を、プラスミドベクタ-に挿入し、枯草菌RM141株のプロトプラストを形質転換した。得られた形質転換体よりセルラ-ゼの生産量の上昇した株をプレ-ト上で選択した。その結果約3500株の形質転換株より1株、目的のコロニ-を得た。この株の培養上清を用いてセルラ-ゼ、ヌクレア-ゼ、プロテア-ゼの3種類の酵素活性を測定したところ、宿主RM141株に比べてそれぞれ1.5,2.0,38倍に比活性が上昇していた。またこのプラスミドを菌体外プロテア-ゼ及び菌体内主要セリンプロテア-ゼの欠損株に導入したところ、プロテア-ゼ活性の付与は認められなかった。以上の結果から考えて、このプラスミドには目的としていた分泌促進遺伝子がコ-ドされているものと考えられ、現在塩基配列の決定、サザンハイブリダイゼ-ションによる由来の確認並びに既クロ-ン化分泌促進遺伝子との異同について解析を行っている。
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