研究概要 |
医療品や食品の放射線による滅菌のさいの容器の材料の段ボ-ルやその原紙にガンマ線を照射して、諸特性の変化を追究して次の結果を得た。 1.段ボ-ル原紙のライナと中しんに最大100KGyまでのガンマ線を照射した。耐折強さ、引張り強さ、引裂き強さ、破裂強さの変化は、前年度に検討したパルプからの手抄き紙の場合と同様、大幅に低下する耐折強さ以外は低下幅は小さく、特に引張り強さの低下率は小さい。 2.段ボ-ル原紙に独得の衝撃穴あけ強さのガンマ線照射による変化は小さく,また圧縮強さは最大線量の照射でもほとんど変化しない。 3.以上の結果から、紙・板紙を構成する繊維間の結合に寄与すると考えられている水素結合には、ガンマ線照射の影響は及ばないことが推察できる。 4.段ボ-ルに最大100KGyまでのガンマ線を照射した。破裂強さ、衝撃穴あけ強さ、圧縮強さの変化割合は、原紙の場合よりもさらに小さく、接着力強さの変化も小さい。 5.接着剤として用いられているデンブンは放射線照射により崩壊する化合物であるが、段ボ-ルの接着層にはガンマ線照射の影響は及んでいない。 6.滅菌に必要な25KGyのガンマ線照射で、AA級段ボ-ルは外装用のJISの4種に適合するが、A級段ボ-ルは3種に落ちるため、照射後の取扱いに注意を要する。 7.ガンマ線照射試料のリサイクルにおいて離解による短繊維化が進み、ろ水度が低くなる。しかし、リサイクルによる強度低下と照射による強度低下の合計以上の悪影響はない。
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