製紙用高分子薬剤の機能発現機作:蛍光標識薬剤による基礎的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63470119
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 田中 浩雄 九州大学, 農学部, 助教授 (20038243)
• 研究分担者: 阿部 善作 九州大学, 農学部, 助手 (30091383)
• キーワード: 蛍光標識高分子 / 高分子の吸脱着 / 高分子交換反応 / 吸着鎖のコンホメ-ション / 繊維細孔への高分子の進入

研究概要

平成元年度の研究実施計画に応じて実績の概要を述べる
1.3級アミノ基を有するポリアクリルアミド(PAM)の合成と蛍光標識
PAMのホフマン反応をジメチルアミノプロピルアミンの存在下で行ない、1級と3級アミノ基を有するカチオン性PAM(C-PAM)を合成した。CーPAMの1級アミノ基を水ーDMFの均一系でダンシル化し、蛍光標識した。生成物は励起波長330nm、蛍光波長537nmを有し検量線は良好な直線となった。
2.固体表面における高分子薬剤の交換反応
分子量800万のC-PAMの交換反応はほとんど起こらなかった。しかし、40万では相当に、2万では比較的容易に起こった。一方、分子量40万、荷電密度2.5meg/gのC-PAMの交換反応は極く少し起こるのみであったが、荷電密度の低下に伴って容易となった。これらの傾向は表面のスム-スなポリスチレンラテックスと多孔性のセルロ-ス繊維とで同様であった。
3.繊維の細孔分布と高分子薬剤の交換反応の相関
BKP、UKP、GPに対するC-PAMの吸着量は、より多孔性と考えられるBKP、UKPでは3週間後でも増加し続けるが、GPでは約3日後に飽和に達した。ホリマ-の細孔への進入は細孔分布に大きく影響されることがわかった。交換反応からさらに詳しい情報が得られるものと期待したが、交換反応ではパルプの荷電密度の影響が大きく、今後の研究が必要であった。
4.紙力増強剤の繊維内分布と増強効果
LBKPについて、C-PAMの添加から抄紙までの時間を10分〜21日間変化させて、成紙の強度を比較した。紙力は始め大幅に向上するが、その後減少した。この傾向は細孔へ進入し易い低電荷の場合顕著であった。

研究成果

• [文献書誌] Hiroo Tanaka: "Preparation of Cationic Polyacrylamides by the Hofmann Reaction.Fluorescent Labeling of Cationic Polyacrylamides" J.Polymer Sci.,Chemistry. 27. 4329-4339 (1989)
• [文献書誌] Hiroo Tanaka: "Adsorption of Cationic Polyacrylamides on to Monodisperse Polystyrene Latices and Cellulose Fiber:Effect of Molecular weight and Charge Density of Cationic Polyacrylamides" J.Colloid and Interface Sci.134. 219-228 (1990)
• [文献書誌] Hiroo Tanaka: "Exchange of Cationic Polyacrylamides Adsorbed on Monodisperse Polystyrene Latex and Cellulose Fibers:Effect of Molecular Weight" J.Colloid and Interface Sci.134. 229-234 (1990)
• [文献書誌] Ye Xiaochung: "Effect of Network-type Polyacrylamides on the Drainage and Retention of Wheat Straw Pulp" 木材学会誌. 36. 64-68 (1990)
• [文献書誌] 田中浩雄: "カチオン性ポリマ-のセルロ-ス繊維細孔への這入" 紙パ技協誌.
• [文献書誌] D.H.Page: "Fundamentals of Papermaking" Mech.Eng.Publications, 1208 (1989)