研究概要 |
平成2年度の研究実施計画に応じて実績の概要を述べる。 1.高分子薬剤の固体間転移ー分子量及び荷電密度の影響:分子量(MW;2万〜300万)と荷電密度(CD;0.6〜2.5meg/g)の異なるカチオン性ポリアクリルアミドを合成し,これをダンシル化により蛍光標識した(DCーPAM)。CDーPAMをまずパルプに吸着させ、これにポリスチレンラテックス(PSL)を追加して、種々の速度で攪はんした。所定時間に5mlを取出し、網でパルプとPSLを分離した。さらに膜でPSLを濾別、風乾後減圧乾燥した。PSLをDMFに溶かし蛍光を測定、検量線との比較で転移量を求めた。他方、分離したPSL液に界面性剤を加え、吸着されていたDCーPAMを脱着させた。これを膜で分離,濾液を減圧濃縮,GPC分析に供した。 MWの影響:CDーPAMの転移の容易さは、中MW>高MW>低MWであった。MWの高いDCーPAMではポリマ-交換反応が起きないこと(昨年実績)著しい差異があった。 CDの影響:CDの影響は余りなく、CDの高いポリマ-も転移し、これまたボリマ-交換反応と異なる結果であった。 分子鎖切断数:転移時,条件により1〜200個程度切れることがわかった。 以上の結果から、ポリマ-の固体間転移の原動力は水力学的せん断力や固体間の摩擦であり、移転に際し分子鎖切断の起こることが始めて明確に実証された。 2.パルプの種類による高分子薬剤の交換反応の差異:各種パルプの細孔分布を溶質排除法により測定した。交換反応はパルプの荷電と細孔の大きさに影響されるが、ポリマ-は細孔中へ浸透することが示された。 3.高分子薬剤の細孔内浸透と紙力増強効果の相関:抄紙までのパルプとポリマ-の接触時間が長くなる程、紙力の向上塗が低下した。この結果からもポリマ-は繊維孔内へ浸透することが支持された。
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