研究課題/領域番号 |
63470121
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
児玉 正昭 北里大学, 水産学部, 教授 (40050588)
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研究分担者 |
佐藤 繁 北里大学, 水産学部, 講師 (20170748)
緒方 武比古 北里大学, 水産学部, 助教授 (00104521)
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キーワード | 麻ひ性貝毒 / 有毒渦鞭毛藻 / 麻ひ性貝毒産生菌 / Alexandrium / Moraxella sp. |
研究概要 |
麻ひ性貝毒(PSP)による貝類の毒化は有毒渦鞭毛藻の発生が原因となる。しかし筆者らは、野外における両者の関係の詳細な調査から、有毒渦鞭毛藻のみでは説明不可能な貝類の毒化現象があることを指摘してきた。先に報告したように、筆者らはある種の細菌がPSPを産生することを認めている。そこで本年度はこれら細菌の生態を調べ、細菌と貝類毒化の関係を検討した。大船渡湾では本年度もAlexandrium tamarenseが発生し、ホタテガイが毒化したが、例年見られるように、ホタテガイの毒性はA.tamarenseが消失後にも再び増加する現象がみられた。そこでこの時期の海水中の浮遊粒子をメッシュの異なるふるいで大きさ別に分別して毒性を測定したところ、細菌と同様の大きさを持つ画分にかなりの量(ca 60MU/100L)のPSPの存在を認めた。さらにこの画分には筆者らが先に報告したPSP産生菌Moraxella sp.が存在することを認めた。従ってこの時期のホタテガイ毒性の増加は、これら細菌を貝が直接摂取しその毒を蓄積したことによることが考えられた。またこの結果はMoraxella sp.の毒生産が菌を培地を加えない海水、すなわち貧栄養の状態においた場合に増加することを示唆した。そこでMoraxella sp.を天然海水中で培養したところ、培養10日目の菌体にかなりの量のPSPが認められた。HPLC分析の結果は毒がA.tamarenseの毒と同様の成分からなることを示した。この間菌の生長は殆ど見られなかった。以上の結果はPSP産生菌の毒生産は菌を飢餓状態においたときに増大し、この時の毒成分は渦鞭毛藻のそれと一致することを示す。次にA.tamarense以外の有毒渦鞭毛藻について細胞内より菌の分離を試みた。その結果有毒株からは常にPSP産生能を持つ細菌が分離されたが、無毒株からはPSP産生菌は分離されず、有毒渦鞭毛藻の毒生産に毒生産菌が関与することが強く示唆された。
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