研究概要 |
アルドラーゼB遺伝子は主として肝において発現している。これまでの研究で我々は同遺伝子の組織特異的発現にはキャップサイト-1から-202bpのプロモーター領域とその領域に結合するクロマチンタンパク質が重要であることを示してきた。このプロモーター領域には3カ所のタンパク質結合サイト(キャップサイトに近い順でサイトA、B、Cと呼ぶ)が存在することがフィトプリントから明らかとなった。そして、それぞれのサイトに結合するトランス因子をAIF-A,-B,-Cと命名し、その同定を目指してきた。これらの転写因子に関してこれまで明らかになったところをまとめてみると次のようである。1.AIF-Aと-Cは同一か極めて類似したタンパク質であろう。それらの核内濃度はin vivoにおける同遺伝子の発現と一致しない。2.サイトBはCCAATモチーフを含む。in vivoにおいてAIF-B濃度と同遺伝子の発現はよく一致する。このことは肝発生に伴う同遺伝子発現の上昇とAIF-B濃度の上昇が平行すること、および肝の科学発癌で同遺伝子発現の低下とAIF-B濃度低下が平行することから明らかである。3.サイトBにはin vivoにおけるメチル化が同遺伝子発現とよく相関しているHhaIサイトが存在するが、これをin vivoでメチル化するとAIF-Bの結合は阻害される。このことはこのメチル化が同遺伝子発現に重要であることを示す。4.このAIF-Bは熱安定性や分子量からみてこれまで報告されている転写因子のCBP,CTF,NF-1とは異なるタンパク質であろうと思われる。 現在、それぞれのサイトを含むDNAをプローブとしてゲルシフト法でその活性を測定しつつ、ラット肝核クロマチンタンパク質よりこれらの因子をP-cellulose,DEAE-cellulose,Heparin-agaroseカラムクロマトで分離している。これらをさらにDNA-affinityカラムにより精製を進めそのアミノ酸配列についての情報を得るべく進行中である。
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