研究課題/領域番号 |
63470123
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
太田 道雄 九州大学, 歯学部, 教授 (30037824)
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研究分担者 |
中川 雅晴 九州大学, 歯学部, 助手 (80172279)
松家 茂樹 九州大学, 歯学部, 助教授 (00108755)
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キーワード | 歯科用貴金属合金 / 耐食性 / 分極曲線 / 合金組織 / 貴金属度 |
研究概要 |
本年度は、歯科用貴金属系合金の腐食挙動に対する貴金属元素添加の効果、表面生成物の影響、二相分離の影響および二相合金の分極曲線に対する各相の寄与を明らかにした。主要な結果は以下の通りである。 1.CuまたはAgまたはPdを添加した4種の二元合金を作製し、静的分極実験によりQ値を求め、耐食性を評価した。その結果、Cuに5〜10at%のAuまたはPdを添加するとQ値はむしろ大になる。この結果は、純銅表面に不溶性の反応生成物(CuCl)が形成されてCuイオンの溶出は抑制されるが、貴金属元素の添加は不溶性皮膜の生成を抑制すると考えれば説明できる。この点は、不溶性皮膜の形成が期待できないNaNO_3水溶液を用いた実験によって確認された。 2.腐食挙動に対する合金組織の影響を明らかにする目的で、単相組織を持つAuーCuーPd系、単相および二相組織を持つAuーCuーAg系合金の静的、動的分極実験を行った。その結果、以下の結論を得た。 (1)単相合金の腐食挙動は合金組成、特に貴金属度(nobility)によってほぼ一義的に決定される。 (2)二相合金の分極曲線は複雑な様相を呈し、電流値の急激な増大のみられる電位(Ec)も二ケ所に現れる。 (3)しかし、一見複雑な曲線も、その合金を構成している二つの単相合金の曲線の重ね合わせによって説明できる。すなわち、複数のEcはそれぞれの相のEcに対応し、各電流における電流値は、各相のその電位における電流値に体積分率を乗じた値の積算値に等しい。すなわち、加成性が成立し、一般に定量性に乏しいとされている動的分極曲線についても定量的取扱いができることを明らかにした。
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