本研究以前に得られていたブタ脳チュ-ブリンを用いた実験にひきつづき、ウシ脳チュ-ブリンへのリゾキシン、メイタンシンの結合をSHアルキル化剤との拮抗を指標として他薬剤と比較し、この両化合物の挙動が非常に良く一致していて、コルヒチン、ビンブラスチンとは異なることを示した。次に、各種糸状菌の薬剤耐性を用いて行い、リゾキシン耐性とベンズイミダゾ-ル耐性が交差しないことを示した。ベンズイミダゾ-ル類はコルヒチンと同部位に結合することから、糸状菌チュ-ブリンにおいてもコルヒチン結合部位とリゾキシン/メイタンシン結合部位が異なった点にあることを示した。更に麹カビAspergillus nidulansのリゾキシン感受性野性株とリゾキシン耐性β-チュ-ブリン遺伝子変異株のβ-チュ-ブリンのアミノ酸配列を決定し、100番目のアミノ酸がリゾキシン・メイタンシン感受性を決定していることを明らかにした。酵母についても同じ結果が得られた。 一方で、リゾキシン/メイタンシン結合部位近傍の構造についての情報を得るため、光アフィニティ-ラベルを企画した。そのために、先ず、リゾキシンの部分構造を変換し、チュ-ブリン重合阻害活性を測定し、いくつかの側鎖変換誘導体が十分な活性を示すことが分かったので、側鎖部分にP-アジド安息香酸基を導入した光アフィニティ-ラベル用誘導体を合成した。また、メイタンシン類からも十分な活性を持つ誘導体を合成し、チュ-ブリンとの結合を検討している。
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