研究課題/領域番号 |
63470133
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
勝部 幸輝 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (20032013)
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研究分担者 |
北川 康行 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (70195254)
佐藤 衛 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (60170784)
楠木 正巳 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (90135749)
畑 安雄 大阪大学, たんぱく質研究所, 助手 (10127277)
松浦 良樹 大阪大学, たんぱく質研究所, 助教授 (90029968)
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キーワード | X線回析 / 蛋白質結晶解析 / 動的構造解析 / 放射光 / イメ-ジングプレ-ト |
研究概要 |
Escherichia coli B由来のグルタチオン合成酵素はATPの存在下でγ-Glu-CysとGlyよりグルタチオンを合成する酵素である。アミノ酸残基316よりなるサブユニットの四量体として存在する。硫酸アンモニウムを沈澱剤とした微量透析法によって本酵素の良好な結晶を得、多重同型置換法で位相決定を行った。2.7Å分解能の電子密度図は部分的に電子密度が低く見えない場所があったが、主鎖のフォ-ルディングが一義的に決定でき、側鎖の電子密度も現れた非常に良好なものであった。さらにコンピュ-タ-グラフィックスシステムを用いて分子モデルを構築した。グルタチオン合成酵素のサブユニットは二次構造に富む三つのドメインから構成され、四次構造はサブユニット間に大きな溶媒領域を有している。さらにATPおよび基質とのコンプレックスの結晶を調製して回折強度デ-タを収集し、Dーフ-リエ解析することによりATP、基質の結合部位を決定した。これらの結合部位はサブユニットの間の溶媒領域に面している。電子密度が見えない領域は、Glyに非常に富む部分で17残基にわたっており、高いフレキシビリティを持つ為電子密度が現れないと考えられる。このフレキシブルなル-プはサブユニット間の溶媒領域中に突き出し、ATPまたは基質の結合部に届くに十分な長さをもつ。ル-プとATP及び基質の結合との関連を調べるため、ル-プの中間に位置するアルギニン残基の直前を切断するアルギニルエンドペプチタ-ゼによる消化実験を行った。Native酵素の場合ル-プ中のアルギニン部位で切断された2つのフラグメントがSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって確認出来た。さらにATP、γ-Glu-Cys、及びこれらの混合物を存在させた時に同様の消化実験を行い、ペプチタ-ゼによる切断の反応速度を追跡した。その結果、ATP及び基質が存在しているとル-プの中央でのペプチタ-ゼによる切断から保護されることがわかった。このことは、フレキシブルル-プがATPおよび基質の結合に関与しており、結合することとによりフレキシビリティが下がる事を示唆している。しかし、コンプレックスの解析において、ル-プに相当する電子密度は現れなかったので、基質等が結合してもフレキシビリティは存在している。次にフレキシブルル-プの最初のGlyをValに変え、ル-プのフレキシビリティの特性を変えたミュ-タントを作成し、基質の結合と反応に与える影響を測定した。その結果、ミュ-タント酵素は失活し、基質の結合定数も減少した。これらの事実よりこのル-プのフレキシビリティは基質およびATPの結合に重要であり、反応の進行に決定的な役割を果たしていることがわかった。現在さらにこのフレキシブルル-プの解析を進めている。
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