研究概要 |
ニジマス未受精卵表層胞に局在する主要糖タンパク質であるポリシアロ糖タンパク質(PSGP)を特異的に切断するプロテア-ゼ(PSGPase)は極めてユニ-クなタンパク質分解酸素である。本研究ではPSGPase活性の新しい測定法(塩化セチルピリジニウムと反応物・生成物とのコンプレックスの溶解度の差を利用するアッセイ法)を開発し、それを利用してニジマス未受精卵からPSGPaseを単離・精製する方法を確立した。PSGPaseは低塩濃度条件下においてのみ活性発現が見られること、更に低塩濃度処理によって高分子量型(160K)からより活性の高い低分子量型(17K)へと変換することをHPLCを用いて明らかにした。その結果酵素比活性をcortex画分からの粗抽出液の約10,000倍にまで高めることができた。この酵素標品についてPSGPaseの酵素化学的諸性質を調べ、新たに基質特異性に関して種々のサケ科魚未受精卵から精製したPSGPを天然基質および種々のペプチドを合成基質として使用することにより、ニジマスPSGPaseの基質特異性はAsp残基のN-端側を切断し、その際切断部位から3残基N-端側のPro残基の存在が重要であるという結果を得た。 PSGPaseの未受精卵内局在部位についても種々の方法を駆使して調べた結果、ニジマス未受精卵PSGPaseは基質であるPSGP分子と表層胞中に共存していることが決定された。受精あるいは人為的卵活性化に伴う表層胞のexocytosisによって両者とも囲卵腔中に放出・局在変化され、囲卵腔が酵素反応の場となることが明らかにされた。 これらの研究結果はPSGPaseの同定と酵素化学的諸性質を明確にしたばかりではなく、そのユニ-クな基質特異性から今後のタンパク質化学分野等での有用性を保証するものである。
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