研究概要 |
キイロショウジョウバエ亜群4種(D.melanogaster,D.simulans,D.maunritiana,D.sechellia)について、HindIIIの切断によって得られる約5KboからなるDNA断片のクローニングが終わり現在はこの断片のなかに含まれるND2、COI、COII、ATPase6、ATPase8のタンパクをコードしている遺伝子の塩基配列の決定を急いでいる。なお科学研究費補助金により購入したDNA合成装置を用いオリゴヌクレオチドを作成しプライマーとして塩基配列の決定に役立てている。現時点では各遺伝子の塩基配列の決定がいまだ部分的ではあるが、種間の比較から、アミノ酸を置換する非同義置換率(座位当り)のより低いCOIなどにむしろ多くの同義置換が蓄積していることを見出した。 今後は、mtDNAのより広い領域にわたる塩基配列の決定を完成させる。その結果を得て次の点に注目して分子進化学的な解析を行いたい。すなわち、タンパク質をコードしている遺伝子については、各遺伝子の同義置換・非同義置換率の推定を行う。さらに同義置換率と非同義置換率の関係、同義置換の方向性やコドン使用パターンなどについての検討を行う。tRNAやrRNAでは、それらの塩基置換率を推定し、同時に置換のおきている座位が予想される高次構造のどのような位置にあるかなどを調べ、核にコードされているこれらの遺伝子における変化と比較する。 こうした検討を加えることによってショウジョウバエmtDNAの進化速度の定量化をすすめると共に、同義置換率のバラツキをもたらす主たる要因の解明を行いたい。遺伝暗号の進化の研究に貢献出来るものと考える。
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