キイロショウジョウバエ亜群4種のmtDNA全塩基配列の決定とその分子進化学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480001
• 研究機関: お茶の水女子大学
• 研究代表者: 石和 貞男 お茶の水女子大学, 理学部, 教授 (20017205)
• 研究分担者: 松浦 悦子 お茶の水女子大学, 理学部, 助手 (00111691)
• キーワード: 種の分岐 / mtDNAタンプ / キイロショウジョウバエ / 同義置換速度 / トランジション

研究概要

D.melanogaster,D.simulans,D.mauritiana,D,sechelliaのmtDNAからHindIII,EcoRIのフラグタントを得て、その全塩基配列の決定を、合成プライマ-を用いた補助手段も併用して進めている。しかし現在は、D.simulansに主力を置いている。
今迄に得られた結果のなかで共通の領域に関する塩基配列2509bpの解析を行い、いくつかの進化学的な知見を得た。
(1)同義置換中のトランジション(TS)型はショウジョウバエと霊長類でその蓄積の速度に著しい差はないが、ハエで非常に低いレベルで飽和が観察された。しかも、この飽和のレベルがコドン毎にそれぞれ固有に決まる可能性がある。又、TS中の2-コドン-セットではAG間の塩基置換の頻度は霊長類とハエ共にTC間に比べ非常に遅い、コドンの使われ方が、いずれも大きくAにかたよっていることによるのではないかと考えている。
(2)2509bpに基づいてmtDNAの系統樹を作成した。D.sechelliaのmtDNAはセ-シェル島などに分布するD.simulansのmtDNAに近く、それから分岐したことが推測出来る。又、D.mauritianaとD.simulansに共有される同一タイプのmtDNAが存在し分岐年代の推定に大きな問題を投げかけた。この問題に対する詳細な議論はより多くのデ-タが期待される次年度の報告書で行いたい。

研究成果

• [文献書誌] Matsuura,E.T.,Chigusa,S.I.and Niki,Y.: "Induction of mitochondrial DNA heteroplasmy by intra-and interspecific transplantation of germ plasm in Drosophila." Genetics. 122. 663-667 (1989)
• [文献書誌] Niki,Y.,Chigusa,S.I.and Matsuura,E.T.: "Complete replacement of mitochondrial DNA in Drosophila." Nature. 341. 551-552 (1989)
• [文献書誌] Matsuura,E.T.,Chigusa,S.I.and Niki,Y.: "Differences in the modes of transmission of foreign mitochondrial DNA in heteroplasmic lines for intra-and interspecific combinations in Drosophila melanogaster." Jpn.J.Genetics. (1990)
• [文献書誌] Satta,Y.,and Chigusa,S.I: "On the difference of synonymous substitution rates of mitochondrially coded genes of Drosophilla melanogaster and its siblis specis." Molecular Biology and Evolution. (1990)
• [文献書誌] Satta,Y.,Matsuura,E.T.and Chigusa,S.I.: "Mitochondrial DNA polymorphism in Drosophila melanogaster.(1990)pp.57-73 in Population Biology of Genes and Molecules,(edited by N.Takahata and J.F.Crow)" Baifukan,and Chapman and Hall., (1990)
• [文献書誌] 共著(五條掘 孝),石和貞男: "「集団遺伝学-遺伝子はどのように進化するか」" 日本放送出版協会、1989., 1-158 (1989)