本研究は、研究代表者によって確率されたニチニチソウ同調培養細胞系を用いて、高等植物の細胞周期の進行とその制御機構に関する総合的な知見を得ることを目的としている。昭和63年度の研究の結果以下の点について明らかとなった。 1 細胞周期各期において、タンパクレベル、タンパク合成速度、およびmRNA構成について2次元電気泳動法によって調べたところ、周期の進行に伴うタンパクの分解や修飾等の翻訳時、および翻訳後の調節機構が働いていること、またS期で3種類、細胞分裂期に1種類のmRNAが発現することが明らかとなった。一方周期特異的ではないが増殖の盛んな細胞に発現する2種類のmRNA種が同定された。 2 S期および細胞分裂期のmRNAからcDNAライブラリーを作製しdifferential screeningを行なったところ細胞周期中でその発現が変動する4種類のcDNAがクローニングされた。 3 細胞周期突然変異株の単離を目的としてアラビトプシスの種子に突然変異を誘起された。現在、変異株を単離、同定中である。 4 細胞周期の制御に関与すると考えられているポリアミンについて、細胞周期の進行に伴う量的変更について調べたところ、プトレッシンとスペルシジンが、G_1/S期およびG_2/M期において一時的に増加することが明らかとなった。このポリアミン含量の変動は、ポリアミン代謝径路のkey enzymeである、オルニチン脱炭酸酵素およびアルギニン脱炭酸酵素の活性の変動と一致するものであった。 以上のように、次年度については、研究を推進、発展させていくとともに、さらにオーキシンと細胞増殖との関係、また情報伝達で関わる因子についても研究を進めていく予定である。
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