本研究では[1]密閉型植物生育装置を2基を用い、65%O_2O.05%CO_2の高酸素下でC_3、C_4植物を約3週間生育させ、他の条件を等しくした21%O_2O.05%CO_2の空気中で生育したコントロ-ルの植物と比較して、光合成・光呼吸および酸素障害の防御に働く代謝系がどんな適応をするかを調べた。高酸素下では生重量当りクロロフィル量は減少するが、蛋白量に差はなかったので、酸素活性は葉抽出液の蛋白当りで比較した。C_3植物3種ではカルビン回路のFuBPホスファタ-ゼとNADPトリオ-スリン酸デヒドロゲナ-ゼは高酸素下で活性が増加したが、RuBPカルボキシラ-ゼと同オキシゲナ-ゼ活性は変わらず、両活性の比にも差はみられなかった。光呼吸グリコ-ル酸経路の酵素ではグリコ-ル酸オキシダ-ゼとヒドロキシピルビン酸デヒドロゲナ-ゼの活性が増加した。また、C_4植物2種ではC_4経路のPEPカルボキシラ-ゼ活性が明かに増加していた。さらに高酸素ストレスに適応してC_3、C_4植物共にグルタチオンレダクタ-ゼ活性が著しく増加し、ス-パ-オキシドディスムタ-ゼも増加の傾向がみられた。これに対応して、オオムギでは葉内の還元型グルタチオン含量が2倍に増加した。 [2]高酸素下でも生育可能な突然変異植物の取得を目指し、EMS処理したオオムギ(C_3)とモロコシ(C_4)種子のM2芽生えを屋外に設置した密閉型植物生育装置にいれ、約75%の高酸素中太陽光下で2週間以上生存できる個体を選抜した。3年間で検定したモロコシの種子26715粒から高酸素耐性株2個体の種子が得られた。検定したオオムギ種子は35650粒に及ぶが、7個体が高酸素下で生存したものの種子は得られなかった。ただし、両植物共にアルビノ、キサンタ、ビリディス、斑入り、巻き葉、低澱粉葉、高澱粉葉などの形質変異株が得られている。
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