研究概要 |
ムラサキウニの間充織胞胚のホモジェネ-ト上清から、DEAE-セルロ-スカラム、セファロ-スG-100カラム、セファロ-スG-50SFカラム、CMセファロ-スCL-6Bカラム、RP-HPLCにより、4種類の外腸胚形成ペプチド(EGIP)を精製した。これらはEGIP-A,B,C,Dと名付けられ、これらのアミノ酸配列が決定された。EGIP-A,C,Dはそれぞれアミノ酸残基52、58、53よりなり、分子量はそれぞれ5754、6464、5737であった。EGIP-BはEGIP-Aのアミノ酸が1つ異ったものとC-末端アミノ酸が1つ欠損したものの混合物であることが明らかになった。 一方、anti-sense oligo DNAをプロ-ブとして選択したクロンのDNAの塩基配列を分析したが、プロ-ブと適合する塩基配列をもつDNAを見出すことができなかった。選択したクロ-ンはEGIPの遺伝子ではないと判断されたため、新たなEGIP-Dのうさぎ抗体を作製し、cDNAlibrayからEGIPを発現するクロ-ンの選択を試みている。 また、anti-tubulinとNDB-phalacidinを用いて間接蛍光抗体法により、細胞骨格の動態を調べてみると、正常胚で認められる基底小体から発達している微小管がEGIPによって弱体化され、特に正常陥入時に見られる陥入部位の微小管の顕著な集中がEGIP処理により消失することが認められた。microfilamentは細胞のapical側に環状に認められるが、EGIP処理により、原腸が外転する基部の構造が消失した。これらの結果はEGIPが植物極板の細胞骨格の形成を局所的に阻害することにより外腸胚形成の原因になることを示唆するが、分離割球を用いた実験やDNA合成阻害剤のaphidicholinとの併用実験により、大割球の分裂阻害をも起こしていることが示唆されている。
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