研究概要 |
外腸胚形成ペプチド(EGIP)はアミノ残基数52〜58のペプチドで,ペプチドA,B,C,Dの4種が單離された。このペプチドの遺伝子の発現調節を調べるために,cDNAのクロ-ニングと,その塩基配列の決定と発現時期の解明を試みた。 ムラサキウニの後期原腸胚よりpolyA^+RNAを抽出し,EGIPーDの2か所のアミノ酸配列をもとにして合成した混合オリゴヌクレオチドをプライマ-に用いてPCRを行ない,ペプチドDのアミノ酸の一部をコ-ドする約120bpの部分cDNAを得た。次に,後期原腸胚からのpolyA^+RNAからcDNAライブラリ-を作成し,前述の部分cDNAをプロ-ブとしてスクリ-ニングを行った。40万個のcDNAクロ-ンをスクリ-ニングした結果,16個のポジティブクロ-ンが得られ,そのなかには,大腸菌内で発現させるとペプチドDに対する抗体と反応するものがあった。これを制限酵素部位によるグル-プ分けを行ったところ,挿入断片が比較的長い11個のcDNAクロ-ンはすべてXhoI切断で同じ長さの断片を生じた。これらは同じ遺伝子由来のcDNAクロ-ンであると考え,そのうち最も長いcDNAクロ-ンをプロ-ブにして,未受精卵からプルテウスまでの発生の各ステ-ジの全RNAに対してノザンブロットを行ったところ、後期原腸期以後にシグナルが現れた。この結果は、EGIPの遺伝子発現が後期原腸胚期から起こっていることを示唆する。このcDNAクロンの塩基配列の決定を試みた結果,このcDNA中にEGIPのアミノ酸配列をコ-ドする領域の存在が確認された。 これらの結果は4種のEGIPが一つの大きな前駆体として合成され,その発現はおそくとも原腸胚期に行われていることを示しているが,発現時期,発現部位などについてはさらに詳細な研究が必要である。
|