研究課題/領域番号 |
63480020
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森沢 正昭 東京大学, 理学部, 教授 (40013594)
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研究分担者 |
林 博司 名古屋大学, 理学部, 助教授 (00022608)
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キーワード | 精子運動開始機構 / 浸透圧 / カルシウム / チロシンキナ-ゼ / cAMP依存性プロテインキナ-ゼ / 精子運動活性化物質 / 両生類 / 海産魚 |
研究概要 |
低張の浸透圧が精子運動開始の最初の引き金をひくことが知られている両生類精子で、Ca^<2+>イオノフォア処理によって運動が停止し、Ca^<2+>を添加すると運動が再び開始すること、界面活性剤によって細胞膜を除去した、除膜モデル精子がCa^<2+>の存在下でのみ運動を開始することが明らかとなり、Ca^<2+>が両生類精子の運動開始の要因であることが示唆された。一方、両生類除膜精子ではcAMP.cGMP等のサイクリックヌクレオチドによっては運動開始が起こらないことも明らかとなり、昨年度の研究で明らかとなったサケ科魚類の精子運動開始機構であるK^+-cAMP系とは異なる機構、即ち浸透圧-Ca^<2+>系が両生類精子運動開始の引き金をひくことが明らかとなった。一方海産魚では高張の浸透圧が精子運動開始の引き金をひくことが、クサフグ精子を用いて明らかにされているが、今年度はヒガンフグ、カレイ系統の異なるヌタウナギ・深海性魚類ヨコエソなど様々な海産魚について調べ、高張の浸透圧が海産魚に共通の精子運動開始要因であることが明らかとなった。更にクサフグ、カレイ等の精子を用い、Ca^<2+>イオノフォア、除膜モデルの運動性に対するCa^<2+>の影響について調べられた。精子運動活性化物質については、シロサケでは雌体膣液の物質がアルカリ性であり、精子内pHを上昇させ精子の活性化を促すことが示唆された。また、ニシン卵由来の精子活性化物質の精製がセファデックスカラムクロマトグラフィ-、等電点電気泳動法/を用いて進められ、まだ単一物質には至っていないものの相当精製された標品が得られてきた。サケ科魚類ではチロシンキナ-ゼによる15Kタンパク質のリン酸化が精子運動開始の最終段階であるが、今年度は大量に購入することの可能なシロサケ精子から、15Kタンパク質、チロシンキナ-ゼ、cAMP依存性プロテインキナ-ゼの精製が可能になり、今後のサケ科魚類精子運動開始機構の生化学的研究の展望を開いた。
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