コオロギ飛翔筋にみられる性二形と計画的退化現象の解析

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63480022
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 山口 恒夫 岡山大学, 理学部, 教授 (60000816)
• 研究分担者: 泰山 浩司 川崎医科大学, 助手 (60148690) ; 岡田 美徳 岡山大学, 理学部, 教務員 (10093676) ; 新井田 昭美 岡山大学, 理学部, 講師 (80033413) ; 酒井 正樹 岡山大学, 理学部, 助教授 (30027502)
• キーワード: コオロギ / 飛翔筋 / 性二形 / 計画的退化 / 運動ニュ-ロン

研究概要

昨年度に引き続いてフタホシコオロギの飛翔筋にみられる性二形と計画的退化現象を解析するとともに、性二形に関連して後胚発生過程における雌雄の形態分化、輸精官の微細形態、性行動の分化などについても調べた。得られた結果を要約すると次のようになる。
1)成虫脱皮直後から雌雄差の明暸な飛翔筋M90には、それぞれ5本の運動ニュ-ロンが走行しているが、その形態の雌雄差及び日齢変化は認められなかった。電気刺激で誘発されるM90の単収縮曲線を解析し、収縮速度、収縮期間、弛緩速度は日齢とともに増大し、雌雄差が明瞭になる傾向が認められた。
2)前胸部神経節の長さと中胸部神経節を下降する縦連合の直径は、雌に比べて雄のほうが大きく、後胸部神経節の第1神経束と横行神経の直径は、雄に比べて雌のほうが有意に大きいことを見出した。また、雌雄の区別は3齢までは外部形態によってはできないが、最終腹部神経節の第7神経束の分枝の形態をみることによって、1齢の幼虫でも雌雄を区別することが可能であることが明らかになった。
3)成虫雌個体の輸精管の外部に塩化ランタンを投与すると、ランタン・イオンはクチクラ分枝のル-メン、分泌細胞の分泌腔、クチクラ分枝の輸精管ル-メンへの開口部、細胞間隙、輸精管を取り巻く筋肉に選択的にデポジットした。この結果は、体腔、分泌腔及び輸精管のル-メン間には通路が存在することを示す。
4)7、8齢の雄幼虫でも、特定の接触刺激を与えることにより成虫と類似した性行動を発現することができた。この事実は、性行動の神経機構が幼虫期において、すでに完成していることを示している

研究成果

• [文献書誌] Sakai,M.,Katayama,T.& Y.Taoda: "Postembryonic development of mating behavior in the male cricket <Gryllus>___ー <bimaculatus>___ー DeGeer." Jornal of Comparative Physiology. 166. 775-784 (1990)
• [文献書誌] Niida,A.,Sadakane,K.& T.Yamaguchi: "Abdominal stretch receptor organs of <Armadillium>___ー <vulgare>___ー (Crustacea,Isopoda)." Zoological Science. (1991)
• [文献書誌] Niida,A.& T.Ohono: "Tectal visual afferents from fish dorsolateral tegmental cells." Zoological Science. 7. 327-330 (1990)
• [文献書誌] 馬場・大坪・広田・志賀・木村・酒井・山口: "フタホシコオロギの飼育法" 採集と飼育. 52. 389-392 (1990)
• [文献書誌] 山口 恒夫: "実験動物としてみた節足動物 ー特に神経行動学の立場からー" 岡山実験動物研究会報. 第7号. 3-7 (1990)
• [文献書誌] 新井田 昭美: "アメリカザリガニの研究と教材化の試み アメリカザリガニの機械感覚受容器ー腹部伸張受容器についてー" 遺伝. 44. 71-75 (1990)
• [文献書誌] 岡田 美徳・山口 恒夫: "アメリカザリガニの研究と教材化の試み アメリカザリガニの眼柄にみられる補償運動" 遺伝. 44. 106-110 (1990)
• [文献書誌] Shiga,S.,Kogawauchi,S.,Yasuyama,K.& T.Yamaguchi: "Flight behavior and selective degeneration of flight muscles in the adult cricket (<Gryllus>___ー <bimaculatus>___ー)." Jornal of experimental Biology. (1991)
• [文献書誌] Yasuyama,K.,Kimura,T.& T.Yamaguchi: "Transverse ionic passages through the cuticula ductules from the haemocoel to the glandular cavities and the lumen of the spermathecal duct in female crickets (<Gryllus>___ー <bimaculatus>___ー)." Jornal of experimental Zollogy. (1991)
• [文献書誌] Baba,Y.,Hirota,K.& T.Yamaguchi: "Morphology and response properties of windーsensitive nongiant interneurons in the terminal abdominal ganglion of crickets." Zoological Science. (1991)
• [文献書誌] Yamaguchi,T.& Y.Okada: "Giant brain neurons of the crayfish:their functional roles in the compensatory oculomotor system.In Frontiers in Crustacean Neurobiology(eds.K.Wiese et al.)" Birkhause Verlag Basel, 7 (1990)