研究概要 |
ウニ胚初期発生過程で、DNAメチル化率の高い時期は、受精後6時間目のモルラ期と24時間目の原腸胚期であり、この間のふ化から間充織胞胚期にかけて、メチル化率は極めて低い。DNAメチル化のSIBA阻害による異常形態胚形成から、DNAメチル化の役割はすでに推定しているが、この2つのメチル化率の高い時期におけるメチル化されるDNA部域がことなることを示す結果を得た。単離核で〔^3Hーメチル〕Sーアデノシルメチオニングメチル供与体としてDNAをメチル化し、EcoRI,HindIIIなど4種の制限酵素によるDNA断片を電気泳動すると、電気泳動パタ-ン上でモルラ期と原腸期では放射活性の分布がちがっていた。脱メチル化率を測定したところ、モルラ期を含むフ化前の発生段階ではDNAは短時間で脱メチルされるが、脱メチルは古くメチル化されたDNAで盛んであることを示す結果を得た。ふ化前の発生期でも発生段階ごとにDNAのメチル化部域がちがう可能性がある。ふ化直後ではメチル化率は低いが、間充織胞胚期では高くなり、ふ化前に〔^<14>Cーメチルコメチオニンをメチル供与体としてメチル化されたDNAは、この時期にほとんど脱メチル化されてしまう。その後メチル比率は高くなり、脱メチル化率は遅くなる。この時期にSIBAでメチル化を阻害すると原腸形成異常などがおこるので、この時期のメチル化は、細胞分化と関連すると考えられる。DNAメチル化を支持する機構として、核タンパクのADPーリボシル化、リン酸化などがあり得ることを示す結果も得ている。又、原腸胚期に生ずる特定タンパク質のうち、本研究室で得られているNa^+,K^+ATPaseのcDNAをプロ-ブとして、情報発現とメチル化の関連の研究を開始した。
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