ウニ胚初期発生過程で、〔メチル^3H〕メチオニンを投与した胚でDNAメチル化率をDNA画分での放射活性によって測定すると、メチル化率は8〜16細胞期からモルラ期に増加し、その後減少して孵化後に再び増加し、原腸形成期に最高値を示す。このメチル化率の発生過程での変化は、単離核に〔メチル^3H〕Sアデノシルメチオニンを投与して測定しても再現される。ウニ胚でのDNAメチル化はSーアデノシルメチオニンの誘導体であるSIBAで阻害される。一方、ウニ胚ではDNAの脱メチル反応もおこっており、脱メチル反応はモルラ期を中心とする時期と、孵化後から間充織胞胚期までの時期にさかんであり、原腸形成後には極めて低い。DNAのメチル化される部域もモルラ期と原腸胚期では異っている可能性を示す結果を制限酵素によって得られたDNA断片の解析で得ている。 原腸胚期直前から原腸形成期を含む時期にSIBA処理をおこなうと、濃度依存的に外胚葉性器官形成が阻害され、高濃度での内胚葉性器官形成が阻害される。DNAメチル化は、単離外胚葉細胞で内胚葉細胞より高い。動物極化胚で正常胚より高く、植物極化胚で低い。動物極化予定胚をSIBAで処理すると、正常胚に近い胚が多くなる。原腸形成期ではDNAメチル化が主に外胚葉細胞でおこり外胚葉分化に貢献していると考える。一方、モルラ期でのDNAメチル化のSIBAによる阻害は、メチル化阻害が高い場合には胚の死亡をまねくが、細胞運命決定には関与しないように見える。 DNAメチル化率の発生過程での変化は基本的には転写制御によるものではあるが、核タンパク質のADPリボシル化、CaMキナ-ゼによるタンパク質のリン酸化もDNAメチル化促進に貢献していることを阻害剤を用いた実験で示した。
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