研究概要 |
本年度はまず、蒼鷹丸(水産庁・東海区水研)、臨海丸(東大・三崎臨海)、諸底引き網・カゴ漁船(長井漁協ほか)及び筆者自身の採集になる2,000点以上の未調査のヒトデ類標本の分類学的研究を行い、その結果の一部を「未発表の標本シリ-ズに基づく相模湾とその近海におけるヒトデ相の研究」として、4月に動物分類学会において報告した(重井・佐波、1989)。春〜秋期にかけては、奄美大島・加計呂麻島、沖縄・慶良間諸島の潮間帯〜水深約15m帯のヒトデ類を調査・収集(スキュ-バダイビングによる)して、同海域未記録種10を含む39種を得た。その内の2種は新種、7種は日本未記録種で、大きな収穫であった。その結果は10月に日本動物学会で、「奄美・琉球諸島の浅海産ヒトデ相の研究」と題して報告した(重井・佐波、1989)。同学会においては別に「相模湾のウニ相とヒトデ相の比較研究と分類学史」についても報告した(重井、1989)。その他の棘皮動物関連研究として、8月に「日本産ウニ類の分類学的研究からの海洋生物地理学へのアプロ-チ」(英文)を報告した(重井、1989)。また、平成2年3月には「ウニ初期胚の温度感受性と繁殖期との関連(及び地理的分布との関連)」(英文)が出版されることになっている(藤沢・重井、1990)。更に「日本周辺陸棚産のウニ類」(和・英両文)の発行も間近かである(重井、1990)。なお、研究経費の費目別使用内訳について、「設備備品費」は計画調書の通り0円、標本収集調査と分類整理のための「旅費」と「謝金」には予定より多額を要したので、主として「その他」の費目から振り替えた。本年度を通じ、分類整理に関しては佐波征機氏(三重県立伊勢高校教諭)、標本収集とフィ-ルド調査については楚山勇氏(水中生物写真家;スキュ-バダイバ-)の貢献が特に多大であった。その他、伊藤勝敏、藤田敏彦、雨宮昭南、鈴木克徳ほかの諸氏の助力をも得た。
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