ストレプトマイシン(SM)生産菌の自己耐性遺伝子として、strAとsmkの2種の遺伝子をクロ-ニングし、前年度は2種の耐性遺伝子の自己耐性への寄与の比較を行ない、そのプロモ-タ-部の構造を明らかにした。そしてsmkは細胞内では殆ど発現していないことを明らかにした。本年度はSM生産菌の多面形質変異株を用いての両遺伝子の発現に関する研究を行ない、以下の成果を得た。 1.多面形質変異株は抗生物質生産能、自己耐性能を失っている株で、本変異株におけるstrA遺伝子の存否をサザンハイブリダイゼ-ションで調べたところその遺伝子の存在が確認され、さらにその遺伝子を単離してStreptomyces lividansに形質転換してSM耐性を調べたところ、SM耐性の上昇が認められた。従って、多面形質変異は本遺伝子の欠落ではなく、転写あるいは翻訳段階にあることが考えられた。親株と変異株における全RNAを調整しノ-ザンハイブリダイゼ-ションを行なったところ、変異株は転写段階に欠落のある事が判明した。親株及び変異株からRNAポリメラ-ゼの分離精製を検討した。ヘパリントヨパ-ルを用いることにより可成効率よく精製することが可能となった。 2.精製ポリメラ-ゼによるin vitro RNA合成系を作成し、一次代謝系に係わる酵素としてxylanase遺伝子を、二次代謝系に関する酵素としてstrA遺伝子を用いてin vitro RNA合成能を比較した。その結果、xylanase遺伝子は菌体のageに無関係に転写されるのに対し、strAは培養後期の菌体より調整したpolymeraseでのみ転写されることが判った。更に変異株から調整したpolymeraseは、転写能が非常に悪いことが判った。 以上の結果は、一次代謝と二次代謝の遺伝子発現はそれぞれの発現に関与するRNA polymeraseの相違にあり、多面形質変異はpolymeraseの変異にある事を明らかにした。
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